2008 Fiscal Year Annual Research Report
慢性萎縮性胃炎に及ぼすヘリコバクタ・ピロリ菌の病原性の民族疫学的検討
Project/Area Number |
18406022
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
青木 一雄 University of the Ryukyus, 医学部, 教授 (60201282)
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Keywords | ヘリコバクタ・ピロリ感染 / 胃がん / 慢性萎縮性胃炎 / ドミニカ共和国 / タンザニア / 中国 / ペプシノゲン / ガストリン |
Research Abstract |
(平成20年度分)平成20年10月に中国福建省(長楽市、廈門市同安区)の地域住民及び平成21年1月にドミニカ共和国(ド国)サント・ドミンゴ市の小・中学生を対象に、両国とも文書で説明し同意が得られた、それぞれ531名、及び496名(長楽市224名、廈門市同安区272名)、計1,027名の対象者に対して健康調査を実施した。ド国で得られた血清サンプルは、本邦に輸送し、ヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)抗体、血清ペプシノゲンI、II値、血清ガストリン値を測定した。中国で得られた血清は、H.pylori抗体、血清ペプシノグンI、II値のキットを購入し、現地の共同研究施設で測定した。これらの測定結果とアンケート調査票のデータを併合し、分析の用に供した。現在、アンケート調査票(対象者の属性(調査地域、性、年齢)、対象者の生活習慣(食習慣、食生活など)、生活環境、上部消化管疾患既往歴、及びそれら疾患に関係する自覚症状の有無など)とH.pylori感染及び慢性萎縮性胃炎(CAG)との関連性について疫学的検討を加えているところであるが、これまで行った分析により、以下のような結果を得た。ド国の若年者(15歳未満)のH.pylori感染率は、男性では、0〜5歳、100%、5〜10歳、79.2%、10〜15歳、64.8%であり(N.S.)、女性では、それぞれ25.0%、31.0%、及び45.6%であった(N.S.)。また、ド国小児のCAG有病率は、男性では、0〜5歳、0.0%、5〜10歳、20.8%、10〜15歳、35.2%であり(p<0.05)、女性では、それぞれ25.0%、31.0%、及び45.6%であった(p<0.05)。一方、中国の地域住民(平均年齢465歳)のH.pylori憾染率は、長楽市では、33.0%であり、廈門市同安区では、23.9%(p<0.05)であった。また、CAG有病率は、長楽市では、7.1%、廈門市同安区では、4.9%(N.S.)であった。本研究の中国福建省におけるH.pylori感染率は、報告者らが1996〜1997年に中国河北省で実施した調査(H.pylori感染率;〜70%)と大きく異なっており、これらの成因を、食生活、食習慣を含めた生活習慣及び生活環境より精査しているところである。また、同時に、H.pylori菌の病原性(Cag Aの有無)の有無の中国国内での地域分布、さらには、中国、ド国、及びタンザニア、並びに日本の4か国間での比較・検討により、H.pylori感染、及びH.pylori感染からCAGへの准展要因が明らかにされCAG(胃がん)の一次予防二次予防が期待される。
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