Research Abstract |
私たちは現在,Webやヒトゲノムといった膨大な量のデータを効率よく処理しなければならない,という問題に直面している。こうしたデータは,膨大ではあるものの,比較的単純な構造をしていると考えられる。例えばWebをはじめとするネットワークでは,それぞれのノードにつながるリンクが極端に違う,いわゆるscale freeと呼ばれる性質を持つ。またヒトゲノムであれば,DNAは文字列の切片データであり,その隣接関係は区間グラフと呼ばれる単純な構造を持つことが知られている。 本研究のテーマは,こうした膨大でかつ単純なデータに対して,効率のよいアルゴリズムを提案,開発することであった。 本研究期間においては,最終的には査読つき論文を2本,審査つきの国際会議での発表を4件(うち1件は招待講演)という業績をあげることができた。また,特に区間グラフについては,実際につくつかのアルゴリズムを実装して,効率の良さを確認することができた。 また,時系列データを扱うための区間グラフモデルにおいて,新たな確率的なモデルを提案し,そこにscale free性が現れることを解析的に証明した。こうしたscale free性を持つモデルは複雑になりがちであり,理論的な解析がちゃんとできる単純かつ自然なモデルは,筆者の知る限りでは他には存在しない。今後の研究における標準的なモデルになりうると思われる。 以上の成果より,予算に見合うだけの十分な研究実績をあげることができたと考えている。
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