Research Abstract |
災害時の故障やテロ等による悪意のある攻撃に対して,分断されにくい通信インフラの構築と,現実的な地理的空間上のネットワークに適した方策を探ることは重要な研究課題である。本研究では,近未来のアドホック通信への応用を念頭に,情報通信の基盤技術となり得る自律分散的なネットワークの設計原理を,トポロジー特性,耐故障性,ルーティングの効率性等に着目したアルゴリズム的な観点から検討し,本年度は以下の成果を得た。 ・地理的空間上に構築されるスケールフリーネットワークモデルを提案し,その地理的制約から生じる結合耐性の脆弱化が少量のランダムなショートカットの追加で劇的に改善できることを数値シミュレーションから明らかにした。また,この改善案がドロネー三角分割など他のネットワークにも現実的かつ効果的に適用できることを示唆した(学術論文や国際会議発表など)。 ・上記のショートカットがパケット転送に主要なバックボーンとなり得ることを定量的に分析したり,コミュニティ構造を考慮した情報伝搬の影響などについても着手した(国際会議各1件ずつ)。 ・災害発生時の情報収集を,住民から各地区の自治体への情報提供と,自治体間の伝達連携として捉えて,石川県加賀地区における庁舎や役場の位置,及び,地震災害のハザードマップに従った発生頻度を想定して,迅速かつ信頼性の高い収集ができる連携結合の仕方を探り,国際会議2件に発表した。さらに,加賀地区の人口分布データを上記に活用する準備を整え,過密過疎を招く県や市町村の人口分布を確率過程モデルのパラメータ推定から再現できることを示した(学術論文や国際会議発表など)。 こうした成果を,書籍2冊,学会誌や科学雑誌2件,招待講演2件などにおいて積極的に公開した。
|