Research Abstract |
本研究の目的は,従来,その利便性のみが議論されてきた公共空間におけるロケーションアウェアサービスを対象に,現在位置や移動履歴を望まない第三者から隠蔽する権利,すなわち,ロケーションプライバシの問題を取り上げ,その保護機構および位置匿名化アルゴリズムを示すとともに,実システム上での評価実験を通して,様々な条件下での,基本性能(運用性),安全性,ユーザビリティ,の各指標を示し,提案アルゴリズムの有効性を実証的に検証することにある.研究計画初年度の平成18年度は,簡略化した問題として,「ユーザあるいはエリアを特定可能なロケーションアウェアサービス」を想定し,申請者らが提案しているロケーションプライバシ保護アーキテクチャlocation proxy(以下,LOXY)の再検討および拡張を行った.これにより,「匿名性の指標locset人以上が同じ位置に存在する粒度」で位置情報を公開するよう,公開位置情報の匿名性を指定できるようになった.locsetの値が大きいほど,公開する位置情報の匿名性は高くなり,サービスによる位置情報の悪用を防げるようになる.本フレームワークは,ロケーションアウェアサービスを,その対象となるユーザおよびエリアの違いから,トラッキング,モニタリング,リスニングサービスに分類し,サービスタイプごとに適したプライバシプレファレンスの設定手法を提供している.本成果の意義は,従来は「位置情報を公開するか否か」の二極でしか選択肢を持てなかったユーザが,位置匿名化によって「この程度の匿名性で位置情報を公開する」といった中間解を選択できるようになる恩恵を示した点にある.
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