Research Abstract |
DTW擬距離を距離とみなし,時系列データを距離を保存するようにユークリッド空間へ埋め込み,ベクトルデータに変換する問題を考える.埋め込み手法として,多次元尺度法(MDS)がよく知られているが,DTW距離が擬距離であるため,大きな誤差が発生する. 本研究では,上記の問題点を持たない埋め込み手法として,ISOMAP,およびSDEを検討している.これまでに得られた知見は以下の通りである. (1)ISOMAPはMDS以上の精度を示さなかった.負の固有値の数も多い.より多くの計算量を要することを考えると,ISOMAPをこれ以上検討する必要性はない. (2)SDEを適用するには,拘束条件として与える近傍間擬距離を距離の公理を満たすように修正する必要があり,これが難しい.われわれは,埋め込み前の近傍間擬距離と埋め込み後のユークリッド距離との差を目的関数として最小化するSDP(半正定値計画問題)を考えることにより,上記の問題が迂回できることを発見した. (3)補間埋め込みもSDPとして定式化できることがわかった. (4)実験に使える実時系列データとして,手話に加え,音声と手書き文字を整備した. (5)MDS埋め込みで大きな誤差が発生したデータは人工データであり,実データ(手話,音声,手書き文字)に対しては,MDSはまずまずの埋め込み精度を示すことがわかった. 今後は,SDPの精度および計算量の評価,MDSとの比較,SDPによる補間埋め込みとナイストロム法の比較,さらに,応用(分類問題,類似時系列検索)を行う.
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