Research Abstract |
都市景観の時間変化を考慮に入れた評価分析手法を構築するために以下の検討を行った. 1.建物壁面色彩の影響分析 建物壁面色彩3水準(寒色系,暖色系,(寒色暖色)混合)と植栽2水準(有,無)を組み合わせた6種類の動画像刺激を作成し,刺激の提示時間(45秒)を3つのピリオドに分割して,加法形モデルにより各ピリオドの刺激構成要素と評価値との相関分析を行った.その結果,次のような知見が得られた. i)因子分析結果より,第1ピリオドのみの刺激提示は静止画像刺激と同様の効果しか持たない.すなわち,動画像の影響は第2ピリオド以降に現れる. ii)暖色系壁面の連続提示は第1から第3ピリオドを通して評価が高レベルで安定し,混合の連続提示は評価値を漸増させる;しかし,寒色系壁面の連続提示は第3ピリオドでの評価値を急降下させる.その原因として望ましくない色彩の連続提示が被験者の退屈感を招いた可能性が考えられる.また一方で,極端に望ましくない刺激を含む"全刺激の選好"を加法形モデルで表現することの妥当性を考慮する必用がある. iii)植栽は,第2ピリオドまでならある程度の効果を持つが,第3ピリオドになるとその効果は薄れる. 2.評価分析手法の検討 動画像刺激を各ピリオドの構成要素列として(x_1,x_2,x_3),(y_1,y_2,y_3)と表す.動画像刺激の選好を加法形モデル (x_1,x_2,x_3)【greater than or similar】(y_1,y_2,y_3) ⇔ u_1(x_1)+u_2(x_2)+u_3(x_3)【greater than or equal】u_1(y_1)+u_2(y_2)+u_3(y_3) で表すための条件を抽出した,重要な条件は"加法的可解性"である: (x_1,x_2,x_3)〜(x_1【symmetry】a_1,y_2,y_3). 条件の意味は,x, y, aを暖色系壁面,寒色系壁面,植栽有りを意味する記号とすると,暖色系壁面の連続提示は,ピリオド1で暖色系壁面に"適当な"植栽を付加させ(i.e. x_1【symmetry】a_1),ピリオド2,3で寒色系壁面としたものと等価になるということである.ただしy_i(i=1,2,3)はu_i(y_i)=0を満たす点である.これは公理的測定論の"制限無し可解性"の特殊版であるが,加法形モデルの適用可能性に対する判別条件になると考えられる.
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