2006 Fiscal Year Annual Research Report
分析書誌学の萌芽と発展に関する実証的研究-研究者間学術コミュニケーションを通して
Project/Area Number |
18500188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
若松 昭子 聖学院大学, 基礎総合教育部, 教授 (80331354)
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Keywords | 情報図書館学 / 図書館学 / 書誌学 / インキュナブラ / 印刷史 |
Research Abstract |
本研究では、19世紀後半から20世紀初頭にかけて発展した分析書誌学の成立と普及の様子を、書誌学者たちの交流の記録や文献のみならず、彼等の理念や研究の成果がどのように実践に反映されたのかを検証しつつ、学術的なコミュニケーションの一過程を実証的に解き明かす。具体的には、分析書誌学の集大成のためにインクナブラ(15世紀印刷本)の史的配列法であるプロクター分類法を考案した大英博物館のR・プロクター、当該分類法を勤務先図書館のインクナブラ編成に応用したR・ペディー、プロクター分類法の体系に則ってインクナブラを収集し新たなコレクションを構築したP・バトラーの3人の書誌学者の理論と実践に着目することにより、分析書誌学がイギリスからアメリカへ導入されるに至る一つの学術的な系譜を明らかにする。 平成18年度は、プロクターに関する資料の収集と、インクナブラ・コレクションを体系化する方法の一つであるプロクター分類法の実際を検証するために、2回にわたり大英図書館(もと大英博物館図書館部)にて調査を実施した。インクナブラには、さまざまな活字が用いられており、それによって印刷者や印刷年代を同定し、15世紀における印刷術の普及と発展のプロセスを辿ることができる。しかし、大英図書館には約一万点のインクナブラがあり、それらをすべて閲覧することは不可能である。したがって、プロクター分類法を参照しつつ、印刷術伝播のプロセスの痕跡が示されているインクナブラを厳選し、入念な観察とともに代表的な頁については画像データとして複製した。また、大英図書館にはプロクターが編集した目録のほかに他館では見ることができない貴重な手稿なども残されていた。それらの資料からは、プロクターが書誌学分野の研究会の主要メンバーの一人として活躍し、当該分野の発展のために尽力していた様子をうかがうことができた。
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