2007 Fiscal Year Annual Research Report
分析書誌学の萌芽と発展に関する実証的研究-研究者間学術コミュニケーションを通して
Project/Area Number |
18500188
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
若松 昭子 Seigakuin University, 基礎総合教育部, 教授 (80331354)
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Keywords | 情報図書館学 / 図書館学 / 書誌学 / インキュナブラ / 印刷史 / プロクター / 大英博物館 |
Research Abstract |
平成19年度は、入手した文献を読み進める作業とともに、ロンドンの大英図書館(もと大英博物館図書館部)にて昨年度の調査の補足を行うと同時に、印刷史専門図書館であるセントブライド図書館(ロンドン)にてプロクター分類法の応用の実際を調査した。大英博物館では、プロクターのほとんどの手稿を閲覧することができ、その重要部分については複製を入手した。プロクターは、大英博物館のインクナブラ索引を編成するにあたり、インクナブラに用いられている様々な活字体を写し取り、それらをファクシミリ化して刊行している。刊行部数はごく限られていたが、それらは当時同じ研究を試みようとしていた書誌学者たちへ配布され、貴重な参考資料となったことがわかった。また、オックスフォード大学時代の若きプロクターには、インクナブラの研究者として既に著名であったゴフが、有益な助言を与えていたこともわかった。セントブライド図書館では、プロクターの研究を継承し、図書館現場に応用しようとしたペディーの業績を調査した。当該図書館では、現在も資料組織体系の骨格部分にプロクターの印刷史的配列法が組み込まれており、近年編纂された当該図書館の目録にもその影響が顕著にうかがえた。また、ペディーの実践には、米国の書物愛好家団体であるニューヨーク・グロリアクラブ図書室の資料組織体系が影響を与えていたと思われる、新たな発見もあった。さらに、セントブライド図書館は、分析書誌学の萌芽期である19世紀末に、出版業者であり、書物研究者でもあったブレイズの個人蔵書を基にして設立されており、当時は書誌学会の講演会や展示会などの会場としても度々利用され、書誌学者たちの活動の拠点のひとつとして大きな役割を果たしていたことがわかった。
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Research Products
(2 results)