2006 Fiscal Year Annual Research Report
アクター間の関係からみた英国公共図書館政策の策定・執行プロセス
Project/Area Number |
18500189
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須賀 千絵 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (80310390)
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Keywords | 情報図書館学 / 政策研究 / イギリス / 公共図書館 |
Research Abstract |
本研究の目的は、英国の現労働党政権のもとで、公共図書館政策の決定と執行に関わるさまざまなアクターがどのような意向を持ち、どのような合意を経て政策が形成され、最終的にどのようなサービスが実現したかを分析することである。 本年度は、政策の実施段階に着目し、公共図書館サービスへの中央の図書館政策の影響を分析した。2006年8月に、英国のGateshead、Sunderland、Southwarkの図書館を訪問して、どのようなサービスが展開されているのかを調べ、同時に、図書館員に対するインタビューを実施した。これらの調査を通して、(1)中央による政策が、地方のサービス内容にどのように反映されているか、(2)図書館員は中央の政策をどのように認識しているか、を分析したうえで、その結果をふまえ、(3)どんな政策実施手段が効果を挙げているかを検証した。 Southwarkの図書館では、先方の都合により、予定していた館長とのインタビューが実現せず、職位の低い職員にしかインタビューができなかったので、分析の対象から除外した。GatesheadとSunderlandにおける調査の結果、次の3点を確認することができた。まず、中央政府の政策とサービス内容との関連について、中央の図書館行政への関与の増大は、一見、サービスの同質化を招くように思われるが、訪問調査では、それぞれ地域の事情を反映したユニークな図書館サービスが展開されていた。次に、図書館員の政策への認識については、中央の政策のうち、「インパクト尺度」については、両自治体が経営上の優先事項とみなし、『将来への枠組み』については評価が分かれていた。最後に、政策実施手段については、業績評価制度と連動させるという法的統制と財政的誘導が用いられており、それぞれ一定の効果をもたらしていた。
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