2007 Fiscal Year Annual Research Report
アクター間の関係からみた英国公共図書館政策の策定・執行プロセス
Project/Area Number |
18500189
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須賀 千絵 Keio University, 文学部, 講師 (80310390)
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Keywords | 情報図書館学 / 政策研究 / イギリス / 公共図書館 |
Research Abstract |
本年度は,現在の英国における中央政府レベルの公共図書館政策の決定に影響力を持つアクターを確定するとともに,その相互関係を分析した。文献調査によって,アクターであると思われる組織間の制度上の関係を明らかにしたうえで,2007年8月に,それらの機関の担当者を中心に,インタビュー調査を実施し,関与の度合いや相互の関係を調べた。インタビューの対象は,文化・メディア・スポーツ省(以下DCMS)の図書館政策担当者,同省の政策執行機関である博物館・図書館・文書館評議会の図書館政策担当者,公共図書館に関する政策諮問機関である図書館諮問評議会の委員,図書館関係のシンクタンクの責任者各1名である。 その結果,公共図書館政策に関与するアクターとその関係が次のように明らかとなった。 DCMSは,博物館・図書館・文書館評議会と図書館諮問評議会に対して,資金の供給や専門家としての助言などを通して関係を保っている。しかし実質的には,DCMSの公共図書館に対する監督権限は,自治体を統括するコミュニティ・地方自治体省に移行している。博物館・図書館・文書館評議会は,公共図書館にとって,図書館の意義を示すエビデンスを集める役割を期待されているが,斬新なアイデアを持っているとは考えられていない。 一方で,現在,公共図書館は全国的な政策課題から脱落しつつあり,全国基準の廃止などからもわかるように,中央政府では図書館政策を作成しない方向にあることも確認された。同時に,それぞれの地方の図書館政策の策定におけるコミュニティの重要性が言われているが,理念の模索の段階に留まっており,具体的な制度には結び付いていないことも明らかとなった。
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