2007 Fiscal Year Annual Research Report
生体超分子系の精密シミュレーションに向けての高速多重極・反作用場計算の開発と評価
Project/Area Number |
18500226
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
網崎 孝志 Tottori University, 医学部, 教授 (20231996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 伸一 鳥取大学, 医学部, 助教 (00362880)
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Keywords | 分子動力学計算 / 生体超分子系 / 周期境界条件 / 高速多重極法 / 反作用場法 |
Research Abstract |
タンパク質など生体分子系の分子動力学計算においては、静電相互作用を精密に取り扱うことが最重要であり、また、その計算をどこまで高速化できるかで扱える時間スケールが定まる。このとき、数値精度だけでなく、境界条件の影響を軽減することを通して、シミュレーションの信頼性を高めることも必要である。周期境界条件に起因するアーチファクトは、生体分子系については十分に解明されているわけではないが、等方性の少ない複雑な生体超分子系では深刻となるおそれがある。本研究課題は、そのようなアーチファクトの少ない、高速な静電相互作用求値法の開発を目指すものである。その一環として、反作用場法との理論的関係の深いgeneralized Born(GB)法と粒子メッシュEwald(PME)法の比較を行った。GB法は自由境界であるが、PME法は周期境界である。我々が研究対象としているヒトMTH1について、分子動力学シミュレーションから得られるCα原子のゆらぎの大きさについて検討を行ったところ、ゆらぎの大きな領域についてはGB法とPME法の両者で一致しており、いずれもループ部分のゆらぎが大きかった。しかしながら、GB法では、ゆらぎの程度が時間帯により大きく変動し、主成分分析などゆらぎをもとにしたダイナミクスの解析には不適と思われた。また、PMEを用いたMTH1-8-oxo-dGMP複合体のシミュレーションでは、MTH1とリガンドの間に水分子を介した水素結合の架橋が形成され、リガンド認識において重要な知見が得られた。これは水分子を陽に扱う手法の優位性を示す一例である。このことは、周期系のアーチファクトを回避する場合でも、水分子を出来る限り陽に扱うような手法が望ましいことを示唆している。
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Research Products
(3 results)