2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18500240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 暁子 Kyoto University, 医学研究科, 助手 (80343226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 能宏 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 部長 (30224611)
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Keywords | 自殺 / 予防 / 国際比較 / 神道 / 宗教 / キリスト教 / 文化 / 仏教 |
Research Abstract |
自殺予防の国際比較研究においては、各国の文化的背景を知る必要がある。文化的背景には家族の助け合いの意識に係わるもの伝統文化も含まれ、これには宗教文化も影響する。この点で、我が国の神道は、仏教やキリスト教、イスラム教のような他の宗教と比較すると、戒律も聖典も存在しないにもかかわらず、多くの日本人の心の拠り所として影響を及ぼしている宗教的文化という特徴を持っている。神道に戒律や聖典がない理由は、神道が、古来、自然の恵みに感謝し、その土地で暮らす人々の共同体の由来一つ一つに関わる複数の神を祀ることから始まったからである。神道では、宗教的文化である一方、人々が訪れ、信仰する気持ちを表す場所として機能してきた全国各地にある神社がネットワークを形成することにより、宗教的組織も有する特徴を持っている。 現在、日本では、正月三日間で300万人が参拝する明治神宮から地域の小さな社まで神社は日本の津津浦々に存在し、その数は約8万社にのぼる。神仏混淆があるため、このような神社に参拝する人々と宗教法人としての教派神道に所属する人々と、その他の宗教の信者数とを合わせた総数に占める、神道系、仏教系、キリスト教系の割合はそれぞれ50.3%、44%、1%と推定されている。このように、神道の影響を受けている日本人の割合は多いが、神道は宗教的文化であり、人々が信仰心を表して年中行事などに参加するため集まる神社は、教化機能を必ずしも果たすものではない。その結果、現状では、自殺予防について、神道に基づく組織的な対応があるわけではない。しかし、神道の規範には、人の命を大切にすることが含まれており、これが宗教的文化としての神社の祭りや年中行事や参拝の機会を通じて自殺予防のために組織的に活用されていく可能性は大きい。 このような観点から、平成18年度は、日本の神道の歴史と特徴を概観し、神道における人の命の大切さの根拠を述べて、神道と自殺予防との関係について文献研究を行った。
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