2007 Fiscal Year Annual Research Report
成体神経幹細胞における腫瘍抑制遺伝子APCの機能解析
Project/Area Number |
18500245
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
井村 徹也 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 助手 (00405276)
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Keywords | 再生医学 / 脳・神経 / 神経科学 |
Research Abstract |
研究代表者らは、家族性大腸ポリポージス症の原因分子であるAdenomatous Polyposis Cohi(以下、APC)に注目し、神経幹細胞の動態におけるその役割を詳細に解析することで、成体脳内における幹細胞能の維持や増殖・神経分化の調節メカニズムを解明しようとする研究を企図した。 平成19年度には、平成18年度に作製した成体神経幹細胞APC欠失マウスモデルを用いて、その表現型及び神経幹細胞動態の変化の解析を行った。 GFAP-Cre-APCコンディショナルマウスでは、嗅球・海馬歯状回での成体神経幹細胞系譜の細胞系列でβcateninの著明な蓄積がみられ、脳内細胞のβcatenin量の調節におけるAPCの重要性が示された。しかし当初の仮説に反して、βcateninの蓄積にもかかわらず腫瘍源性の変化はみられず、逆に神経幹細胞の増殖は中等度抑制されていた。さらに、嗅球・海馬歯状回の神経新生は著明に減少しており、嗅球の萎縮が明らかであった。In vivo及びin vitroの系におけるさらなる解析からは、APCの欠失は神経幹細胞自体の生存や分化能には著明な変化をもたらさないが、神経への分化後に新生神経の形態変化と移動異常を引き起こし結果としてアポトーシスを誘導することが示された。 また、APCの欠失は神経幹細胞以外にも興味深い変化を引き起こすことが明らかとなった。小脳においては、APCの欠失はバーグマングリアの形態異常を引き起こし、異所性顆粒細胞の出現が多数観察された。眼においても、APCがレンズの形成にとって必要であることが明らかとなった。 以上の結果から、成体脳内神経幹細胞及びその系譜の細胞群においては、APCはいわゆる腫瘍抑制遺伝子としての働きではなく、新生神経の移動・生存に重要な役割を果たすことが示された。
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