2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経系に対するHGFの機能とその作用分子機構の解析
Project/Area Number |
18500294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
船越 洋 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40273685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 敏一 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00049397)
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Keywords | 肝細胞増殖因子(HGF) / c-Met / 神経変性疾患 / ALS / 脳虚血 / オリゴデンドロサイト / トランスジェニックマウス / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
HGFは、肝細胞増殖の本体として分離・精製・クローニングされた日本オリジナルな細胞増殖因子である(Nakamura T et al., Nature 1989)。 本研究プロジェクトにおいて、私達はHGFの多彩な機能の中で特にHGFの神経系における機能に焦点をあて研究を施行した。本年度は、まずHGFの示す強力な神経栄養活性に基づく多彩な神経疾患への治療効果の解析を行なった。次いで、HGFの神経栄養活性の作用分子機序について解析を施行した。その結果、HGFは、これまでに報告のある脳虚血や筋萎縮性側索硬化症(ALS)に加えて、神経引き抜き損傷(Hayashi et al., 1996)や、他の神経変性疾患モデル動物に対しても治療効果をもつことを明らかとした。 HGFの神経栄養活性を示す分子機構としては、従来明らかとなっているカスパーゼを介したアポトーシスを抑制する機構に加えて、カスパーゼを介さないアポトーシスを調節する際重要とされるアポトーシス誘導因子(Apoptosis-inducing factor : AIF)の核内移行を抑制する機構も介することを明らかにした(Nishimura et al., 2006)。HGFは脳虚血で惹起されるpoly(ADP-ribose)polymerase(PARP)とp53の誘導を抑制することから、HGFはPARP/p53/AIFカスケードの抑制を介して脳虚血時の酸化ストレスを軽減し神経細胞保護に機能する分子機構があることを初めて明らかとした。 このようにHGFの神経栄養活性に関する機能解析が進む一方で、HGFの神経細胞以外の神経系細胞における機能、例えばグリア細胞のなかでもオリゴデンドロサイトやその前駆細胞(OPC)に対するHGFの機能はほとんど明ちかとされていない。本研究において、HGFとその受容体の発生過程に於ける発現、機能解析を施行した結果、HGFは発生過程でOPCとオリゴデンドロサイトの両細胞にシグナルを入れ、OPCの増殖をうながす一方、その分化を調節することが初めて明らかとなった。この結果は、HGF蛋白質投与と、その機能中和抗体の脳定位投与で詳細に解析した(Ohya et al., 2007, in press)。 HGFの神経疾患に対する遺伝子治療については、HSV1ベクターを用いた骨髄間質細胞移植およびアデノウイルスベクターの投与方法を用いその効果を確認した(Zhao et al., 2006; Hayashi et al., 2006)。
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