2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18500297
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有働 洋 Kyushu University, 理学研究院, 助教 (70363322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 博之 九州大学, 理学研究院, 教授 (20124224)
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Keywords | 神経新生 / 成長因子 / 情動 / 脳 / マウス |
Research Abstract |
大人における神経新生は、アルツハイマー病などの神経変性疾患や、うつ病などの気分障害を改善する上で非常に注目されている。我々は神経幹細胞の増殖を促す成長因子に注目し、それらを脳で過剰に発現するマウスを作製することで、個体レベルにおける実際の効果を解析することを試みた。まず、血管内皮増殖細胞(VEGF)を発現するマウスでは、若年期において海馬における神経新生が顕著に増加していたが、高齢のマウスではコントロールと同程度であった しかし、情動行動における顕著な差(VEGFの抗うつ・不安・恐怖作用)は、高齢のマウスでも同様に観察された 条件付けでは学習行動が観察され、VEGFによる情動の変化は、それを担う脳領域(扁桃体等)の機能喪失によるものではない。海馬神経細胞の電気生理学的な特徴については、コントロールと同程度の刺激応答が観察され、長期記憶の生理基盤とされる長期増強も観察された。VEGFが情動の変化を生み出すメカニズムについては更なる解析が必要である。一方、線維芽細胞増殖因子(bFGF)についてはマウスの作製に時間を要したが、最終的に4系統の樹立に成功し、発現レベルの高い2つの系統について戻し交配および繁殖を行った。組織レベルの解析を行うと、bFGFマウス(系統2)は海馬歯状回における分裂細胞の増加に有意差がみられず、当初の予測とは異なる結果を得た。しかし、これについて例数を増やす以外に、系統1を含めて確認を進めており、総合的に評価が必要になる。VEGFマウスでは脳が肥大化するなど肉眼でも表現型に違いがみられたが、bFGFマウスでは見かけ上大差はない。上皮細胞増殖因子(EGF)を発現するマウスについては、系統を樹立が不成功に終わった。考察として、成長因子(VEGF)は神経新生を顕著に促進するとともに情動に影響を与えることを見出したが、これらには直接的な相関関係がなく、おそらく独立なシグナル伝達経路を介して発現していると考えられる。
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