2006 Fiscal Year Annual Research Report
視細胞シナプス間隙のpH変化をもたらす網膜水平細胞のプロトン輸送機構
Project/Area Number |
18500313
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seijoh University |
Principal Investigator |
金子 章道 星城大学, リハビリテーション学部, 教授 (00051491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 雅弘 首都大学東京, 都市教養学部, 教授 (20336530)
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Keywords | 網膜 / 受容野 / 側抑制 / 水平細胞 / pH / pH感受性色素 / V-ATPase / Bafilomycin A1 |
Research Abstract |
視覚系ニューロンは円形で同心円状の受容野を持ち、受容野中心部と周辺部は拮抗した性質を持つ。網膜における側抑制はすでに視細胞レベルで観察されており、水平細胞が錐体視細胞の周辺受容野形成に関与していると考えられている。本研究では申請者らが提唱している水平細胞の膜電位によってもたらされたシナプス間隙のpH変化によって錐体視細胞のカルシウム電流が修飾され、受容野周辺部が形成されるという仮説を証明するために、(1)水平細胞の膜電位変化が細胞の外側のpHを変化させるか、(2)pH変化は膜電位とどのような関係を持っているか、(3)pH変化はどのようなメカニズムによってもたらされるのかなどの問題を解明することを目的として本研究を行った。 1.pH感受性蛍光色素H-110を用いたpH変化の光学的測定 pH感受性蛍光色素HAF(5-hexadecanoylaminofluorescein)は長い脂肪酸の側鎖とfluoresceinのpH感受性部分を持つため、細胞外から投与すると側鎖が細胞膜に突き刺さり、fluoresceinが細胞外部に露出して固定されるので、細胞膜外面のpHを捉えることが出来る。コイ網膜から単離した水平細胞にHAFを作用させ、440nmと490nmの2波長で励起して得られた細胞の蛍光画像を記録した。2波長の励起光による蛍光強度の比を取り、これをpHの値に換算した。高カリウム液やカイニン酸を含む液で水平細胞を脱分極させると、細胞外表面は0.1-0.2pH単位ほど酸性化した。酸性化の度合いは脱分極量に依存していた。 2.水平細胞の膜電位変化に伴う細胞表面のpH変化をもたらすメカニズムの解明 水平細胞膜表面を酸性化させる分子機構の一つとしてvesicular typeのH^+ pump(V-ATPase)の関与を検討した。V-ATPaseを選択的に阻害するBafilomycin A1(0.2μM)を投与すると脱分極誘起性の酸性化が抑制された。N-ethylmaleimide(NEM)でも同様の結果が得られた。他の可能性を示唆する結果は得られなかった。このことから水平細胞で膜電位依存的に細胞外のプロトンを増大させた主要な膜の分子機構はH^+ pumpであることが示唆された。
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