Research Abstract |
静脈還流量が増加すれば,静脈に血液が蓄積し,静脈の形態変化に影響を及ぼすものと予測される.これまで,水中運動における運動強度と静脈還流量の変化に関する明確な資料は得られていない.そこで,水中ハンドエルゴメーター運動時の静脈還流量の変化が運動強度変化に依存するものと仮説立て,その検証を行った.被験者は,健康成人男性6名とした.水温は30.5℃,室温は25.4℃,湿度は64.7%であった.ハンドエルゴメーター運動(20%,40%,60%VO_2max)を行った.陸上条件と水中条件を設定した.水位は剣状突起とした.心拍数,酸素摂取量および腹部大静脈横断面積を測定した.腹部大静脈横断面積および周囲経はBモード超音波エコー装置で評価した.解析は,Bモード超音波エコー像をビデオテープに記録し,画像解析ソフト(NIHimage)を用いて求めた.統計は,反復測定分散分析法および対応ありのt検定を用いた.有意水準5%未満を有意な差とした.運動時の心拍数は,40%,60%VO_2maxの時,水中条件が有意に低値(p<0.05)を示した.運動後の心拍数は,水中条件がいずれの負荷においても有意に低値(p<0.05)を示した.運動時の酸素摂取量は,20%,40%VO_2maxの時,水中条件が有意に高値(p<0.05)を示した.運動前後における腹部大静脈横断面積は,水中条件が有意に高値(p<0.05)を示し,60%,40%,20%VO_2maxの順にその差が大きかった.これらのことは,運動後の回復期における静脈還流量の変化は運動強度に依存することを示唆している.水中ハンドエルゴメーター運動時の腹部大静脈面積は,運動強度増加に依存して有意に減少した.陸上と水中では,腹部大静脈の形態変化が異なることが示唆された.このことから,水中環境での静脈還流が運動時の血液循環に影響を及ぼすことが新しい知見として示された.
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