Research Abstract |
水圧は,静脈還流量を促進するものと考えられている.立位姿勢における水圧は水位に依存し,変化する.このことから,水位を変化させた時の腹部大静脈の横断面積変化は,水位に依存するものと推測した.同時に,静脈還流が促進されれば,静脈血が蓄積されるものと予測した.静脈還流量は,水位変化に依存した.運動時にも同様の変化が生じるものと仮説を立て,腹部大静脈横断面積変化を指標にして検証を行った.被験者は,健康成人男性6名(年齢:23±1歳,身長:173±5cm,体重:65±4kg,体脂肪率:19±2%)であった.水温は30℃,室温は25℃であった.40VO_2maxの負荷で15分間のハンドエルゴメーター運動を行った.Bモード超音波エコー装置を用いて腹部大静脈横断面積を評価した.水位は,大転子と剣状突起とした.心拍数は,陸上立位(運動前)に比較し,水位大転子条件・水位剣状突起条件間において有意な低値を示した.心拍数は,運動後回復期において,陸上立位に比較し,水位剣状突起条件が有意な低値を示した.陸上立位条件と水位大転子条件の間に有意な差が観察されなかった.腹部大静脈横断面積は,水中立位(運動前)において陸上立位より有意に増加した.運動中の腹部大静脈横断面積変化は,陸上立位条件,水位剣状突起条件,水位大転子条件間で有意な差が観察されなかった.しかしながら,水位剣状突起条件では水中立位(前値)よりも減少し,水位大転子条件では増加した.運動後回復期5分まで減少し,その後増加した.回復期の陸上条件と水位剣状突起条件の間に有意な差が観察された.一連の推移は,運動時より回復期の静脈還流量変化が,水位に依存することを示唆する.
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