Research Abstract |
運動学習の短期的な目標は,運動技能の習熟であり,そのためには,効率の良い学習方法を指導者が用いるべきである。ただし,学習者は,いずれ自分自身による問題解決を要求される時が来る。その際に必要とされるものは,問題解決能力であり,それを支える知的好奇心や有能感であろう。それらの育成も運動学習において保証される必要があると考えられる。そこで,自分で課題を見つけさせ,自ら解決していく場を提供することによって,学習者はどのように運動技能を習熟させていったのか,またその過程において,教師や学習集団によるどのような介入が有効であったのか,さらに,その際の学習者の運動変容と認識や意図はどのように関連していたのかについて,ヤリ投げ学習者のレポートから分析することを本研究の目的とした。被験者は,女子大学生2名であった。ヤリ投げが習得すべき課題として用いられた。被験者は4つの技能ポイントを獲得した。(1)耳の側をヤリが通過しなければならない。(2)手首でヤリを押し出すことが必要である。(3)最適な投射角が獲得されねばならない。(4)助走によるヤリの投射速度が増加しなければならない。学習者は,それらの技能ポイントを獲得するために,試行錯誤と観察学習を行っていた。この試行錯誤を繰り返す中で,運動認識が高まっていった。この自己学習による方法(自分で課題を見つけ,自ら解決する)は,教師主導の方法よりも,習得までに多くの時間を要したものの,被験者は,技術習得に留まらず,有能感,知的好奇心,及び,身体に対する気づきを習得することができた。
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