2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦前の体育・スポーツにおける性差認識の構築に関する研究
Project/Area Number |
18500494
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
來田 享子 Chukyo University, 体育学部, 教授 (40350946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 淳子 国士舘大学, 体育学部, 教授 (70207207)
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Keywords | 戦前 / 体育・スポーツ史 / 性差認識 / 女性スポーツ / スポーツ雑誌 / ジェンダー |
Research Abstract |
前年度と同様の方法を用い、「體育と競技」の継続後誌である「學校體錬」およびこの継続後誌「學徒體育」の分析を行った。この分析と初年度以降の結果をあわせ、女性スポーツ黎明期にあたる1920年代から1940年代までの、戦前における性差認識の構築と変容について明らかにすることができた。結果は以下の4点にまとめられる。第一に、分析を行ったすべての時期において、男性に関する性差認識として「父性」を強調するものはまったく見られず、男性に対する体育・スポーツ奨励の根拠として父性が結びつけられることはなかった。第二に、女性スポーツ奨励論における性差認識は、身体的・精神的差異が強調され(1)体育・スポーツが積極的影響を与える差異、(2)体育・スポーツが消極的影響を与える差異、(3)積極的影響を与えるが影響を一定程度に抑制すべき差異、(4)体育・スポーツが影響を与えることはできない差異の4つに分類された。第三に、先述の4つのうち(2)および(3)として認識されるような身体的・精神的差異に関する記述は戦時期には激減した。この背景には女性に対する社会的役割の要求の変化があった。これは他領域の先行研究が指摘する結果を支持するものであり、戦時期には身体に関わる教育や文化である体育・スポーツ領域における性差認識の独自性は主張されにくい状況にあったことがうかがえた。第四に、1920年代に模索された「女子向き」の体育・スポーツは、医学的・生物学的に存在するとされる身体の性差について十分な科学的検討が行われることなく、戦時期の要請に応じ、なし崩し的に男性の量・質により近いものへと変化した可能性が示唆された。
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