2006 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ドイツの国境地域における体操協会の市民的共同に関する研究
Project/Area Number |
18500497
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
有賀 郁敏 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30247803)
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Keywords | 協会組織 / 体操協会 / 市民社会 / ドイツ国境地域 / アソシエーション(アソツィアツイオン) / コルポラティオン / スイス / 体操新聞 |
Research Abstract |
2006年度においては、主に以下の研究を進めることができた。 第1に、国境地域を含む19世紀前半のドイツにおける協会組織(Vereinswesen)の生成、ならびにドイツ市民社会におけるその役割と機能に関する研究動向を整理した。この研究は、前近代社会から近代市民社会への移行を前提に、その重要な担い手である協会組織のアソシエーション的機能を浮き彫りにするといった、従前の歴史学、社会学などでしばいしば指摘されてきた知見に一定の修正を求めるものである。つまり協会組織に関しては、確かにアソシエーション的な機能を伴い、新たな市民社会形成の推進力の一翼として機能した事実を否定できないが、しかし、同時に前近代的な性格を残しながら、アソシエーションとも異なる性格、すなわち国家、都市行政の庇護の下で活動するという側面も存在した事実である。この点は体操協会においても言える点であり、このようなアンビヴァレント、複層的な協会組織の実態を個々の協会を事例に実証していかなくてはならない。 第2に、第1回スイス歴史学会(3月15-17日、スイス・ベルン)に参加し、そこでドイツ国境地域であるスイス、フランス、イギリスで活躍した体操協会の指導者であるK.フェルカーの行動の軌跡を確認したことである。フェルカーに関しては、筆者はすでに短い論文を書いているが、そこではもっぱらドイツ・チュービンゲン市における体操協会の設立を準備した彼の初期の活動を論じたに過ぎない。今回、M.クリューガー教授(ミュンスター大学)による学会での報告によって、チュービンゲン市を離れざるをえなかったフェルカーのドイツ周辺諸国での活動が明らかにされた。筆者はクリューガー教授の了解を得て、氏の報告を翻訳したいと考えている。これによって、筆者が本研究において当面の対象領域に設定しているスイスの体操協会のある状況が明らかになるだろう。 第3に、ミュンスター大学図書館において、スイスを含む19世紀前半のドイツ体操協会関連新聞の幾つかを収集し、整理した。これら新聞は、これまで日本の研究では全く使用されてこなかったものであり、その価値は非常に大きい。この新聞資料を用いた論文の執筆を次年度準備したい。
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Research Products
(1 results)