2007 Fiscal Year Annual Research Report
前庭動眼反射を積極的に利用した動体視力トレーニング法の確立
Project/Area Number |
18500513
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
和田 佳郎 Nara Medical University, 医学部, 講師 (80240810)
|
Keywords | 動体視力 / 前庭動眼反射 / 頭部運動 / トレーニング / スポーツ |
Research Abstract |
頭部加速度センサーである前庭器の刺激によって誘発される前庭動眼反射(VOR)の機能的意義は「静止物体に対する視線(gaze)の安定化」と考えられており、通常、VORと頭部運動の方向は正反対である。したがって、頭部が運動物体と同じ方向に運動する場合にはVORは運動物体と反対方向に誘発され、動体視力にとって不利にはたらくと推測される。ところが本研究代表者はこのような条件下において、頭部運動が動体視力に有利にはたらく場合があることを見出した。本研究では、生理学的エビデンスに基づいた動体視力向上トレーニングを開発する目的で、運動物体追跡中の眼球-頭部運動について解析をおこなった。 予想に反して頭部運動中の動体視力向上はVORよりも頸動眼反射(COR)が寄与するという結果であった。CORは頸部の固有知覚からの入力によって駆動される眼球運動であり、頭部運動と反対方向(Compensatory)のCORと同方向(Anti-compensatory)のCORが報告されている。Compensatory CORはVORと協調してはたらくと考えられるが、これまでAnti-compensatory CORの機能的意義は不明であった。そこで今回、Anti-compensatory CORが頭部運動中の動体視力に与える影響について検討した。実験は健常被験者を対象に、頭部回転中における頸筋の緊張状態と頭部・眼球運動および動体視力の関係を解析した。結果から後頸部の筋電位と眼球運動ゲイン(眼球運動速度/頭部運動速度)の間には有意な負の相関(R=-0.66,p=0.02)が認められ、眼球運動ゲインと動体視力の間にも有意な負の相関(R=-0.59,p=0.04)が認められた。頭部を体幹に固定して回転させると後頸筋が緊張しても眼球運動ゲインに変化がみられなかったことから、上記の結果にはCORが関与していると考えられた。以上より、Anti-compensatory CORには頭部運動中のVORを抑制することにより動体視力を向上させるはたらきがあると推測され、動体視力向上トレーニングの重要な要因になると思われる。
|