Research Abstract |
【目的】小児がん患児の母親における子どもの健康に関する不安が養育態度や患児の学校不適応感に及ぼす影響を検討した.【方法】外来通院中の小学生の小児がん患児とその母親33組を対象として質問紙調査を行った.また,対照群として一般小学生とその母親41組を設定した.調査項目は,患児と一般小学生に対しては学校不適応感尺度を,母親に対しては,子どもの健康に対する不安に関連した認知を測定する病弱傾向認知尺度と養育態度尺度を用いた.【結果と考察】患児の学校不適応感については,一般小学生と有意な差は認められなかった.母親の病弱傾向認知と養育態度については,一般小学生の母親に比べて,小児がん患児の母親は子どもを病弱だと認知している程度が強いこと(t(72)=5.93,p<.001),また,患児に対して制限したり管理的に関わるといった養育態度(統制的関わり)が多いことが示された(t(72)=2.67,p<.05).次に,小児がん患児とその母親について,母親の病弱傾向認知の高低による患児の学校不適応感の違いを検討した結果,母親が患児を病弱だと考えている程度が強いほど,患児は学校不適応感を強く抱いていた(t(31)=-2.38,p<,05).また,母親の病弱傾向認知と養育態度の関連を検討したところ,母親の病弱傾向認知得点が高いほど,子どもに対して管理的な養育態度(統制的関わり)が少なく(t(31)=2.17,p<.05),また,しつけに一貫性がなく,子どもの言いなりになるという養育態度(責任回避的関わり)が多い(t(31)=-2.60,p<.05)ことがわかった.以上のことから,母親の病弱傾向認知は養育態度と患児の学校不適応に影響しており,母親の患児の健康に関する過剰な不安が養育態度を介して患児の学校不適応感に影響している可能性が示唆された.
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