2006 Fiscal Year Annual Research Report
"とろみ"特性を有するカリン種子分泌多糖の構造と機能性に関する研究
Project/Area Number |
18500602
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
中田 忍 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (00164210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 万里子 甲南女子大学, 人間科学部, 教授 (00131516)
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Keywords | 食品 / 粘質多糖 / 糖鎖 / 高分子構造・物性 / 植物 |
Research Abstract |
カリン(Chaenomeles sinensis)の種子部分は冷水に浸漬すると、きわめて高粘性の透明性、かつなめらかな溶液となる。われわれは、この粘性物質の特異な物性と構造の相関性を明らかにすることを目的し、検討を行なった結果、以下のような事柄を明らかにした。 カリン種子を冷水に浸漬し、得られた粘性水溶液をEtOHで沈殿、透析後、凍結乾燥した(水溶性多糖画分、新鮮種子の1.85%)。カリン水溶性多糖の粘度は3%:1372mPa・s、1%:495mPa・s (E型回転粘度計、ずり速度38/s、20℃)。℃から60℃までの温度による粘度に対する影響はほとんどなく、pH3からpH9の間においても粘度:変化はみられなかったが、pH2以下ではゲル化した。 糖鎖構造の解析から、この粘質物はxyloglucanと高含量のウロン酸(GlcUA:23%)を含む酸性多糖(glucurono-arabinoxylan)の異なった分子種から構成されることを明らかにした。この多糖溶液にセルラーゼを作用させると、粘性は反応前の40%以下となった。反応液をEtOHで沈殿、透析・凍結乾燥して得られるglucurono-arabinoxylan画分(収量87.8%)にセルロースを加えても粘性は変化しないが、タマリンドのキシログルカンを加えた場合には増加した。このことはカリン種子の分泌粘質多糖の粘性発現には異種の多糖の分子鎖間の強い水素結合を含めた分子会合が必須であることが示唆された。 さらに、保湿性の試験を行い、他の多糖試料との比較を行ったところ、カリン種子粘質物は中程度の保湿性を有することが明らかとなった。保湿性が非常に優れているとはいえないが、粘性が高く、滑らかでべとつきのない物性は応用性の高いものと考えられ、さまざまな面での応用が期待される。
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