Research Abstract |
物性の異なる9種類の食品を用い,刻み食(10mm角,5mm角,2.5mm角)へのとろみ添加の影響を,物性測定,官能評価,咀嚼筋筋電位測定により検討した。さらに咀嚼物中の食片の粒度および咀嚼液の粘性特性の検討も行った。 その結果,とろみの添加により,官能評価では,どの食品でもどの刻みの大きさの試料でも,とろみなしに比べとろみありのほうがまとまりやすく,やわらかく,飲み込みやすく,総合的に食べやすいと評価された。また,その評価は,刻みの大きさが小さいほうが高かった。また2.5mm角試料のテクスチャー特性では,とろみありのほうが硬さは小さく,付着性は大きいことが確認された。しかし,以上の結果にもかかわらず,咀嚼筋活動の各特性値はとろみの有無間で有意差がなかった。 その原因を探るため,咀嚼物を吐き出し,咀嚼液の粘性特性と食片の粒度を測定した。咀嚼液の粘性特性は,とろみなしは粘性が低くニュートン流体に近く,とろみありは粘性が高く非ニュートン性が大きかった。咀嚼物中の食片の粒度はとろみありの方が有意に大きかった。 食品物性の違いの影響は様々であった。すなわち,破断応力の大きかった人参はとろみをつけることの影響が小さかった。しかし破断応力の大きかったたくあんや大根,また破断歪率が大きかったかまぼこは,きざんだりとろみを添加することにより大きく特性が変化した。一方ようかん,チーズ,山芋などは,とろみを添加しても元の食品自身の特性が大きく表れた。以上,食品物性の違いがとろみをつけたきざみ食の特性にどう影響しているかについては,一定の法則性を見出すことはできなかった。これらの推察を明快な解答にしていくために,更なる広い検討が必要と考える。
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