2008 Fiscal Year Annual Research Report
室町時代物語にみる食文化の実際ー現代の食習慣・食文化の淵源ー
Project/Area Number |
18500611
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
小林 美和 Tezukayama University, 現代生活学部, 教授 (70195824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨安 郁子 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (10123671)
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Keywords | 食文化 / 生活文化 |
Research Abstract |
近時、国民の健康増進、生活習慣病の予防等の見地から、食育の問題が重視され、あらためて日本の伝統的食文化の見直しが必要とされている状況に鑑みて、日本食の起源と位置づけられる室町時代食文化研究を課題とする。膨大な室町時代物語の作品群を多面的に追究することにより、最終的には現代人の豊かで健康的な食生活に資することを目的とするものである。具体的な取り組みとしては、従来、食文化研究の対象とされることの少なかった室町時代物語に登場する、食およびその基盤となる生活文化要素の解読と分析を試みる。室町時代物語は、その多くが、絵巻や奈良絵本の体裁で今日に伝えられており、単に文章の解読というにとどまらず、絵画資料として、視覚的に当時の生活文化のあり方を知ることが可能である。このような立場から、研究を進めてきたが、平成20年度は、ことに年中行事における食文化と、当時の人々の疾病予防や健康観念との関わりを、『貴船の本地』、『祇園牛頭天王縁起』といった室町時代物語、さらには『〓嚢抄』等の中世文書の記事・伝承の解析を通して追究した。そこには、食物の力によって疫病の蔓延から健康を守ろうとする知恵や、それらを年中行事として習慣化し、生活の喜びとして伝承していった中世人の生活の営みが表れている。そして、一面、それらは民間信仰と結びつくことによって、人々の生活の精神的支柱ともなり得た。その他、本年度は、前年度に引き続き、室町時代物語の絵画場面から、食生活に関わる場面の収集・分析を進めたが、そのまとめは、なお今後の課題となった。
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