2007 Fiscal Year Annual Research Report
保育活動における幼児の摂食行為の発達と保育指導に関する研究
Project/Area Number |
18500619
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
石黒 広昭 Rikkyo University, 文学部, 教授 (00232281)
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Keywords | 摂食 / 食行為 / 保育 / 保育者 / 介助 / 談話 / 発達 / フィールドリサーチ |
Research Abstract |
保育園に在籍する子どもの摂食行為がどんな社会的資源に支えられ,どのような様式で,どのような経過を経て発達するものであるのか明らかにすることが本研究の目的である。 (1)調査 当該年度のフィールドリサーチでは5歳児クラスの食事場面の記述を可能にする資料を得た。基礎資料は参与観察から得られたフィールドノーツ,ビデオ記録,ICレコーダー等による会話記録,それに保育者,栄養士のインタビュー記録である。 (2)既存データの分析調査と平行して既存データとしてH18年度に申請者が収集して来た4歳クラスの子どもの食事場面のデータを整理し,その観察毎の食事場面のビデオ記録をデータベース化した。保育園における4歳児クラスの食事場面に特徴的であったのは,食事場面が「食べる場」である以上に「コミュニケーションの場」になっていることであった。つまり,食べるという行為と「話す・聞く」という行為の二つが同時に行われるという,対物的,対人的に見て複雑な相互行為に子どもたちは関与していた。特に興味深いのは子どもたちが眼前の食べ物や人について言及する以上に,眼前にない対象について語り合うことである。では,どのようにそうした会話は可能になるのであろうか。今回の分析から示唆されたことは子どもたちが共通に持っている文化的資源の利用である。特にテレビ等に出てくるキャラクターなどがその主要な資源になっていた。ただし,子どもたちの会話は他者の発言の意味を直接引き継ぐものではなく,同一の項目が出たら,それに自分の持っている知識をただ開陳するというものであった。同一項目が連続することにより,一見談話内容の一貫性が維持されているように知覚される会話が実現されるのである。こうしたいわば「会話練習」が食事という道具的行為の場で行われていることの意味を今後さらに検討していきたい。本研究成果はヨーロッパ幼児教育学会の年次総会(EECELA)で報告された。
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