2007 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン抵抗性を惹起する食事因子 -特にアデイポネクチンと飽和脂肪酸-
Project/Area Number |
18500632
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Research Institution | Tenshi College |
Principal Investigator |
伊藤 和枝 Tenshi College, 看護栄養学部, 教授 (80104983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関谷 千尋 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (30109384)
原 美智子 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (70310092)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 高飽和脂肪食 / TNF-α / ヒト / 食事管理下 / RLP-C / アデイポネクチン / 脂肪酸組成 |
Research Abstract |
[目的]インスリン抵抗性を惹起する食事因子として高脂肪食特に高飽和脂肪酸食の関与を認めてきた。しかし、その機序は明らかでなかった。近年、インスリン抵抗性の分子機構が報告され、インスリン抵抗性に関わるサイトカインと栄養との関係を明らかにする目的で、食事管理下で高脂肪食とサイトカインの関係をヒトで検討した。前年度の研究で低脂肪食に比し高脂肪食でTNF-αの有意な増加を認めた。本年度は高脂肪食によるTNF-αの動きを脂肪酸組成の違いで検討した。 [方法]平均BMI20.7kg/m^2、HbAlc5.1の健康な若年女性10名を対象に、エネルギー1700kcal、たんぱく質E比14%、脂質E比30%、S:M:P;3:4:3、糖質E比66%の高脂肪食(F-30)を5日間、20日間のWashout後、エネルギー、たんぱく質は同一とし、脂質E比30%、S:M:P;5:4:1の高飽和脂肪食(FB-30)を5日間食事管理下で摂取して頂いた。F-30、FB-30の献立は同一とし、食品や調理法による血糖・インスリン反応への影響を除去し、油脂の質で調整した。各食の開始時に、早朝空腹時でのIn Bodyによる形態測定を行い、採血を行った。各検査食5日間負荷後の早朝空腹時に同様の形態測定と採血を行い、検査食の1食量で同一栄養比率の検査食により、Meal Tolerance Test(MTT)を行った。MTTでは、食前、食後30分、60分、120分の血糖・インスリンを測定した。またMTTの食前のTNF-α、LEPTIN、アデイポネクチン、TG,RLP-Cを測定した。本研究は天使大学倫理委員会の承認を得て施行した。 [結果]食事負荷による体重・体脂肪率の変化は各期共に認めなかった。MTTの血糖値は0分・30分・60分・120分共にF-30、FB-30の間に差を認めず、インスリンは30分・60分でF-30がFB-30に比し高値を示した。血糖の総和(Σ血統)は両食間に差は無く、ΣインスリンはF-30gが有意に高値を示した。しかし、HOMA-RにはF-30、FB-30の間に差を認めなかった。TNF-αはF-30に比しFB-30が有意に高い値を示した(p<0.01)。中性脂肪、RLP-Cは食後120分でF-30、FB-30ともに有意に増加し、RLP-Cの増加率はFB-30でより顕著であった。LDL-CはFB-30で有意に上昇した。Leptin、Adiponectinには変化は認めなかった。TNF-α変化率(FB-30/F-30)とHOMA-R変化率(FB-30/F-30)の間に有意な正相関を認めた。RLP-CとAdiponectinの間にF-30、FB-30のいずれにも有意な負の相関関係が認められた。 [考察・結語]高飽和脂肪食により炎症性サイトカインであるTNF-αの有意な増加が認められた。高飽和脂肪食では食後120分のRLP-Cの上昇が高脂肪食より顕著に認められ、sdLDLを増加させマクロファージを産生しTNF-αの増加を齎らした可能性が示唆された。高飽和脂肪食はTNF-αの増加を齎し、長期に及ぶ高脂肪食とくに高飽和脂肪食はTNF-αを介してAdiponectinを低下させ、インスリン抵抗性を惹起する可能性を示唆した。
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