2007 Fiscal Year Annual Research Report
数学的活動のバランスを重視した中学校数学科カリキュラムの開発
Project/Area Number |
18500655
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
池田 敏和 Yokohama National University, 教育人間科学部, 准教授 (70212777)
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Keywords | 数学的活動 / 概念形成 / 数学的モデリング |
Research Abstract |
本年度は、まず、数学の知識獲得を促す活動を2つの類型に分けた。これまで獲得していた数学的知識が根底から覆され拡張されたり統合されたりしていく活動と、これまで獲得した数学的知識を総動員して用いることで解決可能な問題場面を広げていく活動である。そして、数学科カリキュラムは、革命的な知識獲得が節目となって要所要所に位置づけられ、その節目と節目の間では、累積的な知識獲得がなされていると解釈した。革命的な知識獲得は、生徒にとっては大きなギャップになるが、このギャップは数学の本質を理解する上でなくてはならないものである。このギャップを超えていくためには、具体の中での意味ある活動、すなわち、数学的活動が重要な役割を果たしているわけである。次に、革命的な知識獲得に焦点を当て、そこには、少なくても2つの類型があることを同定した。一つ目は、理解の仕方に関することで、帰納的な理解と演繹的な理解である。数学的な性質や定理の理解には、学年進行に伴い、帰納的な理解から演繹的な理解へと変わっていく内容が多い。演繹的理解に入る前に、これまでの理解が帰納的な理解であったことを振り返ることで演繹のよさが見えてくる。二つ目は、定義や定理の意味が拡張されていく点である。算数・数学で学習した最初の定義や定理は、永久不変のものではない。児童・生徒がその定義の曖昧さに気づくことによって、あるいは、新たな問題場面に遭遇しこれまでの定義では通用しないことに気づくことによって、修正されたり、拡張されたりしていくものである。「先生がいったから正しいよ」、「辞書に書いてあったから正しいよ」といった他者からの受け売りの知識ではなく、「現段階ではこれでいこう」といった知識の成長を前提とした知識観がもてるような指導が期待される。次年度は、これらのことを踏まえ、革命的な知識獲得に焦点を当て、どのような内容があるのかを探る。
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