2008 Fiscal Year Annual Research Report
国際比較に基づく日本型環境教育の理念的モデルに関する研究
Project/Area Number |
18500656
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
柴崎 文一 Meiji University, 政治経済学部, 教授 (90260124)
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Keywords | 学校教育における環境教育 / 市民活動における環境教育 / 日本の環境教育 |
Research Abstract |
本年度は日本の環境教育の現状について調査・研究を行った。日本の環境教育には大きく二つの流れがあるように見受けられる。一つは学校教育の場において実施されているものであり、もう一つは市民活動や「自然学校」などの民間組織において実施されているものである。学校教育の場において実施されているものには、さらに二つの区分が見出される。一つは各教科教育との関連において行われているものであり、もう一つは「総合的な学習の時間」を利用して行われているものである。筆者は、物質の循環や、人間と環境とのつながりの観点から、「環境問題」は三つの領域に大別することができると考えている。第一は「資源・エネルギー・廃棄物」に関する領域であり、第二は「自然環境」に関する領域であり、第三は「食と農業」に関する領域である。しかしこれらの各領域は相互に密接な連関性をもつものであり、問題を混同することなく、常に「環境」という総合的な観点に立つことが重要である。学校教育の現場では、社会科との関連で第一の領域に関する環境問題が扱われたり、理科との関連で第二の領域に関する環境問題が扱われているが、そうした個別的な観点から「環境」という総合的な問題把握への展開が欠けているように見受けられた。また家庭科において「食」に関わる事項は若干取り上げられてはいるものの、やはり「環境」という大きな問題意識のもとで「食や農業」という問題がもつ意味の把握へという展開はないように思われた。一方で市民団体や民間組織で行われている環境教育も、元来それぞれの団体は個別的な理念の実現に向けて活動を行っているところから、廃棄物問題や自然保護といった個別的な問題の解決を強く意識するあまり、やはり総合的な「環境」の観点に欠ける場合が多いように思われた。
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