2008 Fiscal Year Annual Research Report
保育における環境教育の実践実態と背景要因に関する調査研究
Project/Area Number |
18500680
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Research Institution | Otani Womens University |
Principal Investigator |
井上 美智子 Otani Womens University, 教育福祉学部, 教授 (80269919)
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Keywords | 保育 / 環境教育 / 保育者研修 / インタビュー / 実践 |
Research Abstract |
まず、昨年度末に調査及び回収した保育現場の研究事業の報告書を対象に内容分析を行った。自然は研究事業の主題として比較的よく取りあげられていたが、その内容を分析すると、実践主体である保育者のねらいの立て方や活動の選択、評価の着眼点、援助の考え方など保育実践の基盤となるところに環境教育的視点が意識されていないことが明らかになった。 次に、環境教育として評価できる実践を行う保育者のインタビューを継続して行った。その結果、(1)身近な戸外での自然体験を含む遊び体験を豊富に持つ、(2)10代は文化や芸術、部活動などに没頭し、特に自然への興味は高くない、(3)保育者を早くから志望していたわけではない、(4)養成教育の影響はほとんど語られない、(5)若い世代はキャンプリーダー等の経験が自然と子どもの関係を考える場となっている、(6)子どもの主体的な活動を重視し、自然の多様性が経験を豊かにするととらえている、以上の6点が共通点としてあがった。 以上の結果から、保育に環境教育を導入する際の課題が明らかになった。自然体験はよく実践されているので、環境教育的な読み取り方法を具体的に保育者に示す必要がある。また、保育者インタビューからは、広い視野で子どもの育ちをとらえる基本姿勢が重要で、養成教育は保育観や個々の技能養成以上の影響を与えていないことが明らかになった。環境教育の観点からは養成教育により豊かな内容を取り込もうとして保育者志望学生の負担を大きくするよりは、専門職としての意識が高い段階での現職者研修の質の向上の方がより効果的であると考えられる。また、基本的な保育観・子ども観が確立していることがそれ以前の前提条件として必要であることもわかった。 これらの点は、今まで実証的に示されたことがなかった点であり、今後の養成教育のあり方や現職者研修のあり方を具体的に提案する際に有効な資料となるであろう。
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Research Products
(3 results)