2007 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ生命倫理学の黎明期における歴史的・社会的背景についての包括的研究
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18500756
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金森 修 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 教授 (90192541)
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Keywords | 生命政治学 / 専門と、非専門との調整 / 終末期医療の政策 / 社会的製度としての生命倫理学の特色 / ゾーエーとビオス |
Research Abstract |
今年度は、基本的に前年度の継続的な作業が主体となった。 つまり、60年代終盤から80年代初頭くらいにかけての生命倫理学上の主要な文献を特定し、読解し分析するという作業である。具体的には、エンゲルハート、ペレグリーノ、ビーチャム、キャラハンなどの哲学系の人間、そしてラムジー、マコーミックなどの神学者、フォックスなどの社会学者というように、生命倫理学という学問がその成立時点から多重領域の専門家たちが結集して分野を成立させていたということ、つまりいわゆる学際性などが話題になる前から、文字通りその最良の一形態を例証していたものだということが明らかになった。ただ、同時に、古来、法学と共に最も専門性の高い知識として君臨していた医学を習得した医師たちが、それら異領域の専門家たちと、どのように対抗して医療行為の航跡を描こうとしていたのかということも、興味深い主題となった。生命倫理は、ほぼ必当然的に生命政治学となった。 こうして、生命倫理(bioethics)の調査の過程で否応なく直面した新たなる問題構制、それは生命政治学(biopolitics)だった。この特性が最も露わになった具体例としては、例えば70年代半ばに全米を二分したカレン・クィンラン事件があげられる。遷延性植物状態にある患者の最終的な処遇を巡る問題は、個人の内面の行動規範にかかわる倫理の枠を超え、類似事例の統合的な処遇にも意味を持つことになる政策分析や政策決定の場面にまで到達せざるを得ないのである。 今後は、このバイオポリティクス的な問題関心を前面に押し出した分析を継続する予定である
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Research Products
(4 results)