2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ生命倫理学の黎明期における歴史的・社会的背景についての包括的研究
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18500756
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金森 修 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 教授 (90192541)
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Keywords | 生権力 / 生政治 / ゾーエー / ビオス / 公私領域の曖昧化 / 生命倫理と政治 / 臓器移植法案改正 |
Research Abstract |
今年はこの研究の最終年度であった。顧みるに、本来この研究は1960年代終盤から70年前後に成立したアメリカの生命倫理学(bioethics)の特徴を見るために、その直前期、つまり60年代と、成立直後の時期、つまり70年代におけるアメリカの生命倫理学的話題の分析を目的とするものだった。ところが、実際に当時の関連文献をあたってみると、まだ模索的色彩が強く、例えばエンゲルハート・カラハン共編の『倫理学の基礎とその科学との関係』数巻を分析してみると、複数関係領域の研究者たちの出会いと自領域での問題構制の他領域への開示という程度の議論に終始しているということが分かった。その意味では、それ自体をそのまま掘り下げることの意味を見いだしにくいという状況になり、研究計画自体の若干の軌道修正を余儀なくされた。 ただ、その過程で、生命倫理学に対するより政治学的なアプローチという視点に逢着したことは幸運であった。図らずもこの<生政治>学的視点は、単に生命倫理学内部に留まることなく、哲学、政治学、社会学など、周辺分野の研究者たちと広く重なる問題構制を構成するものだということが分かった。そしてアレント、フーコー、ネグリ、アガンベンなど、現代思想の思想家たちの分析をすること自体が、その種の生命倫理・生政治学の追究とほぼ等価なものなのだという理解をすることができるようになった。その観点から、フーコーについては前から独自の分析を行っていたがそれ以外の思想家たちも集中的に読破し、入門的な書籍を10年3月に公刊することが出来た。
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