2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世スコラ運動論の総合的研究ーーースワインズヘッド『計算の書』とその影響
Project/Area Number |
18500759
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三浦 伸夫 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (20219588)
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Keywords | スワインズヘッド / 運動論 / アルヴァルス・トマス |
Research Abstract |
スワインズヘッド『計算の書』は14世紀パリのオレーム、そして15・16世紀イタリアに影響を与えたことは知られていたが、16世紀初頭のパリ、そしてその後のイベリア半島への影響はデュエムとワレスの研究以降本格的調査はされていない。本年度は、16世紀パリでスワインズヘッドへの注釈を書いたアルヴァルス・トマス(アルバロ・トマ)の『三種の運動について』(1509)を取り上げ、そこでスワインズヘッドの手法がいかに受容発展されたかの解明を試みた。得られた知見は次のとおり。 1.トマスはスワインズヘッド『計算の書』を発展させた。それは例えば、運動の分類において「一様で比一様な運動」をさらに「基体に関して」「時間に関して」「基体と時間に関して」へ三分類したことや、序章ともいうべき比例論を本論の前に付け加え、分かりやすいように教科書化したことなどに見られる。 2.記述はソフィスマタの形式を取り、仮想世界の運動を数学的論理学的に議論している。 3.パリでのスワインズヘッドの影響は、トマス以外は主としてアリストテレス『自然学』への注釈中に見られる。しかし規模と内容から判断してトマスの著作がもっとも詳しく秀逸である。 4.スコラ運動論はルネサンス期においても衰退せず、パリやイベリア半島ではさらに発展された。 5.トマスのパリ大学での弟子たちが帰国し、16世紀にサラマンカ大学やアルカラ大学でスワインズヘッドの手法が教えられた。 6.マートン・ルールを発展させ、さまざまな「一様で比一様な運動」に適用した。 7.トマスの用いた手法は幾何学的というよりはむしろ算術的であり、現代流に解釈すると級数の和の問題に行き着く。しかも級数の和が求められない場合は、両側で挟み撃ちして値の取るべき領域を求めている。 8.特殊な対数概念の萌芽が見られる。しかし後代の対数の発見との継続性はない。
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