2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世スコラ運動論の総合的研究---スワインズヘッド『計算の書』とその影響
Project/Area Number |
18500759
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三浦 伸夫 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (20219588)
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Keywords | 科学史 / スワインズヘッド / スコラ哲学 / 運動論 |
Research Abstract |
スワインズヘッドの『計算の書』は、数学を自然学や形而上学に滴用した歴史上最初の例として後にライプニッツによって賞賛され、高度に精緻で複雑な内容と形式もつ。本研究で判明したことは次の点である。 1.『計算の書』はスコラ的方式で書かれており、中世大学教育における重要な課題である討論に、題材と類型を与える完全な手引きとして大学学芸学部で使用されたと考えられる。このことはまた写本数が多いことからも言える。初期刊行本が多いのも、15世紀においてはまだスコラ的議論が大学で主流を占めたからに他ならない。 2、熱や運動やなど自然学的題材を含むが、書試から、自然学や形而上学を主題的に展開するものではなく、論理=数学的議論の作業道具とみなされる。 3.当時の影響関係については、論理=数学的議論の関してはヘイティスベリーとブラドワーディンを受け継ぎ、自然学的内容に関してはダンブルトンに繋がる。そして『計算の書』はキルヴィントンへと至る。数学的手法はカンバヌス版エウクレイデス『原諭』に基づく。スワインズヘッドの影響は英国のみならず、その後フランス、スペイン、イタリア、ポルトガルにまで及ぶ。 4.論理=数学的議論の鍵は、質の強弱の付加哩諭とデノミナティオによる測定である。 5.議論の題材は大枠ではアリストテレス的である。すなわち地球中心世界における感覚的自然理解であり、量的議論をするもそれは個別の量を対象とするのではなく、むしろ質的議論が優先する。 さらに本研究ではテクストを一部活字化し、関連するオックスフォードの計算家たちとの関係を示した。
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