2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18500762
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
林 真理 Kogakuin University, 工学部, 教授 (70293082)
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Keywords | 倫理学 / 生命倫理 |
Research Abstract |
現在でも広く論じられているような種類の、生命倫理に関わる問題にうちのいくつかは、既に1970年代から発生しており、それについて様々な議論とともに様々な運動・活動があった。たとえば、組み換えDNA技術による生命操作の問題、尊厳死・安楽死といった言葉で示される人間の死の問題、体外受精や羊水検査を中心とする人間の生の問題などが、中心的な話題とされていた。これらの議論や論争の中から重要なものを選んで、それを再現し読み返していくことによって、現代の生命倫理問題に関して、何らかの示唆を得ようというのが本研究の目的である。結果として、いくつかの重要な示唆を得ることができた。 一つは、生命の資源化・商品化といったことが、批判の対象から抜け落ちていく歴史があるということである。現実にはそういった事態は進んでいるにもかかわらず、その進行はむしろ不可視なものとなり、また批判の対象でもなくなっていく。すなわち、ヒトの身体部分が、資源化・商品化されて流通するという過程が、社会的な摩擦を引き起こす原因ではなくなり、社会に正当なものとして定着していくことである。 また、それと同時に生じている、人間=生命観の変化がある。人間の尊重とは、権利主体であるところに抽象的な人格を尊重することであると見なされるようになり、他方で身体性をもった具体的な時空間内の存在である生命としての人間のあり方が軽視されるようになっている。 以上のようなことを、生命倫理の歩みの中に見て取ることができた。
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Research Products
(1 results)