2007 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化の関与が疑われる東日本太平洋岸における南方系巻貝類の分布域拡大過程
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18510005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 茂明 The University of Tokyo, 海洋研究所, 教授 (20242175)
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Keywords | 温暖化 / 干潟 / 分布域拡大 / カワアイ / 人為的移入 / ミトコンドリアDNA / 遺伝子配列 / 進化速度 |
Research Abstract |
今世紀に入ってから東北地方の干潟と東京湾湾奥部の人工潟湖(新浜湖)で発見されたカワアイ集団の由来を明らかにする事を目的に、既知の国内集団と遺伝的特性の比較をおこなった。遺伝的に分化した本州と沖縄のカワアイ各1個体について、ミトコンドリアDNA約8500塩基対の配列を決定、比較し、昨年度解析したCOI領域に加え、進化速度の速い2領域(ND2遺伝子、12SrDNAと16SrDNAで挟まれる3tRNA遺伝子とノンコーディング配列を含む領域)を選定した。宮城県万石浦、福島県松川浦および新浜湖のカワアイ集団について、この2領域の塩基配列を決定し、COIの結果と合わせて、各集団の遺伝的特性を比較した。東北の2集団は遺伝的多様性が低いものの、西日本の集団と有意な遺伝的差異が認められず、西日本からの移入又は温暖化等による分布域拡大によるものと考えられた。一方、東京湾の集団には3領域のそれぞれに他の日本の集団に見られない変異を持つ個体が高頻度に含まれており、85%の個体がそうした変異を少なくともひとつ持っていた。集団遺伝学的解析からも、東京湾の集団が日本の他のいずれの集団とも有意に異なる事が示された。これらのことから、東京湾の集団は絶滅後に、海外からの人為的な移入によって新たに形成された可能性が高いと考えられる。ウミニナ、ホソウミニナについてもミトコンドリアDNA約4000塩基対の配列を決定した。カワアイも含めた3種間に遺伝子配列の違いは見られなかったが、これまで軟体動物から報告されているどの配列とも異なるものであった。
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