2006 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸微地形の特徴からヨシ原の生態系機能を評価する試み
Project/Area Number |
18510026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
矢部 徹 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 研究員 (50300851)
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Keywords | ヨシ原 / 沿岸微地形 / HGMアプローチ / 地下水位 / 栄養塩環境 |
Research Abstract |
(1)野外モニタリング 霞ヶ浦西浦沿岸を調査地とし、250mおきに設置されている道路標識484地点を基準に全周調査を行った。その結果、沿岸帯現存植生の内訳は抽水植物群落が91%を占める一方で、沈水・浮葉植物は合計3%しか存在しないことが明らかになった。解析を進めたところ、霞ヶ浦右岸・中岸・左岸(調査地点数それぞれ、195・151・138地点)という地理的分類とヨシ群落の有無に有意な関係が見られた。ヨシ群落が確認された220地点のうち57%にあたる125地点が霞ヶ浦右岸で出現した。調査地点に対するヨシ群落出現率も右岸では64.1%で中岸・左岸の各26.8%・38.4%を大きく上回り、霞ヶ浦右岸においてヨシ群落を中心とした沿岸植生帯が発達している、あるいはよく残存していることが明らかになった。さらに微地形的特徴を解析したところ、地先湖底までの勾配については差がなかったが、沿岸帯陸上部の勾配については、右岸では左岸・中岸の60-80%程度の緩傾斜である、という特徴がみられた。また、ヨシ群落の90%以上が砂泥あるいは有機質土壌に成立しており、その80%で土壌表層に腐葉の蓄積がみられた。1972年には抽水植物群落が西浦沿岸帯に423ha、移行帯植生としては1203haが記録されており、1999年の調査結果ではそれぞれ183ha、196haまでそれらが減少していたことが明らかにされて(中村ら,2000)いるが、本踏査調査の結果からはヨシ群落を含む植生帯は西浦沿岸帯で104haと推定され、1999年以降さらに抽水植物群落が減少している現状を明らかにした。 (2)圃場における野外実験 来年度以降、現場での計測を考えている地下水流向流速計について、現場における操作や設置の留意点および適切な観測井の検討を国立環境研究所内実験圃場にある有底枠実験池を使用し確認し、同時に霞ヶ浦右岸の数地点に設置した自記水位計のデータから得られる流速を解析したところ、得られた流速は当該測定機器の計測限界以上ではあるものの保証精度付近であることが明らかになった。所内における予備試験を実施したところ、その結果は良好でヨシ帯底質中の水の動きについて実測できる目処がついた。
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Research Products
(5 results)