Research Abstract |
本研究では,ヒト細胞の放射線応答・変異誘導調節に関して,シャペロン・オートファジーネットワークという新規のシグナル伝達メカニズムを提唱し,次の研究成果を得た。(1)HSP27などのシャペロン類が紫外線致死抵抗化に関わることを,我々は見出している。今回,HSP27に結合する分子として,annexin IIを同定した。免疫沈降実験より,HSP27とannexin IIの結合能が紫外線照射により減弱化すること,およびannexin IIの核局在化も示唆された。さらに,siRNA処理によりannexin IIの発現を抑制すると,紫外線に対して細胞が致死感受性化したことから,紫外線応答に関わる新たなannexin IIの機能を明らかにした。(2)放射線応答に関わる分子の網羅的解析を,2DDIGE法により解析し,X線照射後に核内で発現量の変動するタンパク分子を複数同定した。これらのうち,糖代謝系酵素aldolase Aについて,X線照射後に核内への局在化が見られ,siRNA処理によりaldolase Aの発現を抑制すると,X線に対し細胞が致死感受性化したことから,放射線応答に関わる新たなaldolase Aの機能を明らかにした。(3)酸化障害度が放射線感受性にも関わる可能性があることから,ヒト血清中のヒドロペルオキシド量測定をしたところ,糖尿病などの疾患患者においては,高値を示す傾向が見られた。このような酸化障害レベルが高い血清を得,血清因子による変異誘導の調節活性レベルとの関連を調べている。
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