2006 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による血管内皮細胞の老化機構と血管新生に及ぼす影響
Project/Area Number |
18510042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 雅彦 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教授 (10272600)
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Keywords | 血管内皮細胞 / 放射線 / 老化様形質 / 血管新生 / DNA修復 |
Research Abstract |
本年度は、γ線8Gy照射によって老化様形質を示した血管内皮細胞の血管新生能について検討を行った。血管内皮細胞としては、増殖期にあるウシ大動脈由来血管内皮細胞(BAEC)とヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)を用いた。増殖期のBAECは、ほとんどの細胞が老化梯形質を示し、これはHUVECでも同様であったので、これらの老化様細胞と正常な細胞との間で、アフィメトリクス社のマイクロアレーを用いて遺伝子発現パターンの違いを解析した。老化様細胞ではDNA複製と細胞周期進行に関連する遺伝子の発現が最も影響を受けており、実際、BrdUの取り込みや細胞増殖能が著しく低下していることがわかった。また、老化した細胞では細胞外マトリックスの発現が亢進し、MMP-9の発現も亢進していた。そこで、ゼラチナーゼ活性を利用したアッセイによりMMP-2とMMP-9の活性を調べた所、前者の活性のみが検出され、老化様細胞において有意に亢進していた。スクラッチアッセイによる遊走能では、HUVECにおいて老化様細胞においてやや亢進していたが、BAECでは差は認められなかった。マトリゲル上でのキヤピラリー形成能をみると、両者に差はなかった。次にマトリゲルを通過する浸潤能をみると、いずれの細胞でも老化様細胞において低下しており、また、細胞をマトリゲルに包埋して遊走してくる細胞をみると、老化様細胞においてその能力は低下していた。以上の結果から、放射線によって老化様形質を示した血管内皮細胞は、増殖能が著しく低下し、また、in vivoに近い状況においては、遊走能や浸潤能が低下することがわかった。従って、放射線は、増殖期の血管内皮細胞に老化を引き起こし、結果として血管新生能を低下させる方向に向うことが示唆された。以上の結果は、現在論文投稿中である。興味深いことに、コンフルエントな状態では老化様形質が回避されるメカニズムが存在することもわかり、次年度はそのメカニズムについて研究を進める。
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