2007 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による血管内皮細胞の老化機構と血管新生に及ぼす影響
Project/Area Number |
18510042
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 雅彦 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (10272600)
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Keywords | 血管内皮細胞 / 放射線 / 老化様形質 / 血管新生 / DNA修復 |
Research Abstract |
我々は、ウシ大動脈血管内皮細胞(BAEC)を用いて、コンフルエントな状態で放射線を8Gy照射すると老化様形態の発現が顕著に抑制されることを見いだし、本年度は、そのメカニズムについて検討した。細胞が進展するスペースの問題を検証するため、照射直後に低細胞密度で播き直してみると、増殖期の細胞と同様、ほとんどの細胞が老化様形態を呈した。ところが興味深いことに、照射後72hインキュベーションしてから播き直しを行うと、老化様形態の発現が顕著に抑制されていた。このことは、照射後コンフルエントな状況でインキュベーションしている間に、老化様形質の発現が回避される現象が起こっていることを示唆している。最近、細胞分裂を繰り返すことでテロメアの短縮が起こって老化する現象、すなわち複製老化において、テロメア断端のDNA二重鎖切断(DSB)の蓄積が老化の原因でみるとの考え方が受け入れられている。放射線は直接DSBを引き起こすことから、コンフルエントな状況において、DSB修復の亢進が起こっている可能性を考えた。そこで、コンフルエント状態と増殖期にある細胞におけるDSB修復の効率を、ヒストンH2AXのリン酸化(γH2AX)を指標にした免疫蛍光染色にて検討した。増殖期の細胞では、照射していない細胞でもγH2AXが検出されることから、ATMの基質となるp-LS/TQ配列を認識する抗体を併用し、二重染色フォーカスを放射線特異的なDSBとして定量した。その結果、コンフルエント状態にある細胞において、フォーカス消失速度が早く、DSB修復が亢進していることが判明した。これは、放射線生物学で古くから知られる潜在的致死損傷回復(PLDR)との関連性を強く示唆するもので、BAECにおいてPLDRとは、DSB修復が亢進し老化が回避された結果、増殖能が維持されてコロニー形成率が上昇する現象であるという新しい解釈を提唱した。
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