Research Abstract |
本研究は,X線医学検査による患者の被ばく線量を,多様なX線検査の各々について,先の科学研究費補助金により開発した成人並びに小児の人体ファントム腺器線量計測システムを使用して,成人と小児で別々に,且つ,がんを発症することが知られている臓器ごとに精密に測定・調査し,我が国におけるX線医学検査による医療被ばくの実態を総合的に解明することを目的としている。本年度は,これまで体幹部のみで頭部が無かった成人ファントム線量計測システムに,新たに頭部ファントム線量計測系を製作して組み込み,成人の頭部X線検査における被ばく線量測定を実施した。 1,頭部ファントムの,脳,唾液腺,水晶体,頚椎の各位置に組み込む小型の線量計素子として,市販の板状シリコンフォトダイオードを感度のX線入射方向依存性を打ち消すため2個1対とし,これに生体等価なカーボンファイバーケーブルを取り付けた素子を16個製作した。 2,16個の各線量計素子から線量に比例した電圧を読み取る16チャンネルの電子回路を製作した。各線量計素子についてエネルギーの異なる種々のX線に対し照射線量基準電離箱を用いて線量校正し,この校正値を用いて,電子回路からAD変換器を通してパーソナルコンピュータに取り込んだ各素子の電圧信号を吸収線量に変換するコンピュータプログラムを作成した。 3,新規に購入した京都科学製の成人頭部ファントムに,線量計素子を装着するための組織・臓器位置を指定し,各位置の穴あけ機械加工を行って,線量計素子を装着した。 4,線量計素子を組み込んだ頭部ファントムに診断X線を照射して,システム全体の動作試験および調整を行うとともに,頭部単純撮影における被ばく線量を測定した。また,名古屋市内および周辺の病院でX線CTスキャナによる頭部ルーチンおよび3b-CT,さらに頭部血管撮影における被ばく線量測定を行い,臓器線量および実効線量の評価を行った。
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