2007 Fiscal Year Annual Research Report
DNAの超短パルス紫外線照射損傷過程の分子レベル実時間観測
Project/Area Number |
18510051
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
村上 洋 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 研究職 (50291092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤松 憲 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究職 (70360401)
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Keywords | DNA / 紫外線損傷 / 2光子吸収 / 超高速分光 / 鎖切断 |
Research Abstract |
1.過渡吸収分光測定システムの開発光源フェムト秒レーザーのパルス繰り返し(10Hz)に同期した測定を実施するためのシステムの最適化を実施した。分光検出器のトリガー入力波形などのスタリーニングを実施し、同期スペクトル積算測定のための最適化を行った。また、装置の時間分解能をフェムト秒光源の基本波と2倍波の相互相関関数測定により評価し、光学系の最適化により200フェムト秒程度の時間分解能になることを明らかにした。 2.DNA膜試料の調製及び鎖切断の評価プラスミド精製キットを使用し、大腸菌を用いてpUC18プラスミドDNAを調製した後に、石英ガラスプレート上に滴下して、乾燥DNA膜を作成した。照射後の試料の鎖切断量の定量をアガロースゲル電気泳動により実施した。 3.DNA損傷の紫外線パルス照射強度及び照射線量依存性実験H18年度の照射実験において、レーザー強度の揺らぎに起因したデータのばらつきの問題があったために、本年度はDNA照射中にレーザー強度を実時間プローブするシステムの構築を実施した。これにより、レーザー強度の揺らぎを補正した照射強度の評価が可能になった。また、データの信頼性を上げるために、同じ照射条件の照射を4試料実施し、平均をとった。照射強度10GW/cm^2と20GW/cm^2で、DNA紫外線照射の照射線量依存性測定を実施し、H18年度より信頼性の高い結果を得ることができた。1重鎖及び2重鎖切断DNA以外に、H18年度の結果には見られなかった、DNAダイマー生成に起因すると考えられるバンドが観測された。高照射線量域で損傷状態が変化しなくなる領域を確認することができた。また、変化しなくなる線量の値は照射強度10GW/cm^2の方が少ないことが分かった。二重鎖切断DNAの割合に関しては照射強度が大きいほど大きく、鎖切断が紫外線フェムト秒パルスの非線形光学効果により起こっていることが示唆された。 今後は、DNA損傷の紫外線パルス照射強度及び照射線量依存性をより広い範囲で評価・解析すると共に、本研究の主目的であるDNAの過渡吸収分光研究を実施する予定である。
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