2006 Fiscal Year Annual Research Report
電離放射線により誘発されるエピジェネティックな細胞内変化に関する研究
Project/Area Number |
18510052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
山内 正剛 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, チームリーダー (00260240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福津 久美子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (10238496)
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Keywords | 放射線 / エピジェネティック / 遺伝子発現制御 / 突然変異 / 培養細胞 / マウスFM3A細胞 / Hprt遺伝子 / 6-チオグアニン耐性変異 |
Research Abstract |
平成18年度は、マウスFM3A細胞を用いて、まず照射するX線の線量や線量率と6-チオグアニン(6TG)耐性株の出現頻度の相関を調べたところ、0、2、5グレイまではエックス線照射線量の増加に比例して突然変異株の出現頻度も増大し、その増加程度は最高3倍程度であった。非照射群の変異頻度は、約3×10^<-6>であったが、5グレイ照射群では約10^<-5>であった。10グレイでは死細胞ならびに増殖しなくなる細胞の割合が多くなり過ぎ、変異株の分離実験は再現性が得られなかった。線量率については、50、100、ならびに500、各ミリグレイ毎分で比較実験を行なったが、線量率による有意差は検出されなかった。次いで、それぞれの実験群について96クローンずつの6TG耐性株コロニーを分離し増殖させ、DNAを抽出精製し、PCR法によるLOH解析を実施し、Hprt遺伝子領域に欠失が認められるクローンを同定した。その結果、非照射群では9クローン(約9%)にしか欠失は認められなかったが、2グレイ照射群(500ミリグレイ毎分)では96クローン中15クローン(約16%)に、5グレイ照射群(500ミリグレイ毎分)では96クローン中57クローン(約59%)に欠失が認められた。復帰変異株の分離は、これら欠失変異が認められなかったクローンに限定して実施した。 欠失変異が認められなかった6TG耐性細胞株クローンをそれぞれ独立にHAT培地で培養したところ、2グレイ照射群から1株の、5グレイ照射群から4株のHAT耐性株が得られた。非照射群からはHAT耐性株は得られなかった。これらの6TG耐性株がHAT耐性に復帰する頻度は約10^<-3>であり、通常の突然変異の発生頻度よりも100倍以上高いものであった。これら合計5株の復帰変異株をHT培地で回復させた後、再度6TG培地で復帰変異頻度を測定したところ、10^<-3>から10^<-4>であった。これらのことから、本実験で得られた5種類の変異株が発現する薬剤耐性変異は、塩基置換などの通常のDNA突然変異によるものではなく、なんらかのエピジェネティックな変化によるものであることが示唆された。そこで、これら5株について、ゲノムDNAを抽出精製し、Hprt伝子上流領域の約500塩基対について、バイサルファイト法によるメチル化パターンの変化を調べてみたが、これまでのところ有意なメチル化パターンの変化は検出されなかった。本結果は過去の文献的なデータとは相容れないものであった。
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