2006 Fiscal Year Annual Research Report
セミパラチンスク核実験場近郊住民を対象とした疫学データベースの構築と健康影響調査
Project/Area Number |
18510055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
片山 博昭 (財)放射線影響研究所, 情報技術部, 部長 (20360852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 正治 広島大学, 原爆放射線医科学研究所・国際放射線情報センター, 教授 (50099090)
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Keywords | セミパラチンスク / 低線量被曝 / 放射線 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在カザフスタン共和国保健省放射線医学環境研究所(以下、研究所)と共同で進めている疫学解析用データベースの構築を行ない、低線量被曝の核実験場周辺住民の健康影響を調査することである。 主任研究者は2003年7月に現地に疫学解析用データベースを設置、現地研究所の全面的な協力によりセミパラチンスク旧核実験場周辺の住民の基本情報および死亡原因の収集を行なっている。これまでに死亡情報が69000件、基本情報では136000件がデータベースに保存された。1949年からの死亡データを用いて解析を行なった。データの収集が完全ではないために、被曝による影響を観察するには至っていないが、カザフスタンでのこの地域の死亡の傾向は明らかにできた。(1)1949年から1975年にかけてのがん死亡の1位、2位は胃がん、食道がんである。(2)イラン北部から中央アジアを横断し中国北西部にかけて、食道がんベルトと呼ばれる特異的に食道がんの罹患、死亡が多い地域が存在すると推定されているが、今回の解析でこの地域の実際の死亡データによる食道がんによる死亡が顕著であることが証明された。(3)肺がんは1949年のデータ収集時から顕著に増え続けており、この傾向は男性に非常に高く、女性では殆ど変わらない。カザフ人は元々喫煙習慣がなく、第二次世界大戦での従軍により喫煙習慣ができたことから、この肺がんによる死亡率の上昇は明らかに喫煙によるものと推定される。(4)全死亡の2位および4位は呼吸器系と感染症であり、年齢別に見ると2歳児までの死亡が約70%近くを占める。これは、病院で出産しても自宅での衛生環境が非常に悪いことが推定される。実際に、村での下水道は発達しておらず、井戸を利用する生活であり、汚水も流れ込んでいると考えられる。今後の予定であるが、低線量被曝の影響を見るには、甲状腺疾患などの罹患率を出すことが重要である。したがって、次年度以降は診断センターおよびがんセンターと接触を取り、罹患データが補完できるようにすること、また死亡データの収集に年度によるばらつきが見られるので、これらを保管すること、更に、データを年齢別の人口で調整するための統計データの収集を行なう。
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