Research Abstract |
本研究では,(1)湿地における環境汚染物質の動態把握や起源や供給経路の解明ならびに(2)汚染物質の低減化や回収除去法の探索のため,(I)湿地で採取した環境水中の酸素安定同位体比(δ^<18>O),主要イオン,溶存有機炭素(DOC),溶存酸素(DO)等の測定,(II)汚染物質と環境浄化物質との相互作用に関するモデル実験,を行った。その結果,主として,以下のような知見を得た。(1)佐潟の環境水において,涵養源となる地下水よりも高いδ^<18>Oを示した。さらに,夏季においてδ^<18>Oの増加が顕著なことから,甲殻類のプランクトン等の生物作用に基づく同位体交換による影響が大きいと推定される。(2)夏季に佐潟では,DOおよびDOCがともに高くなった。これは,水生植物等による光合成などの可能性が考えられる。(3)δ^<18>Oとアルカリ度(HCO_3)との相関は,地下水からの涵養が大きい佐潟・鳥屋野潟で概ね高い相関が得られた。一方,δ^<18>OとTOCとの相関関係は,佐潟でのみ高い相関が得られた。これは,前述した甲殻類のプランクトンの作用が関連している可能性が考えられる。(4)降水中の微量金属元素の濃度は春季に増加した。(5)Cr(VI)のフミン物質による還元反応のモデル実験よりpHの上昇に伴いその還元能が順次低下した。一方,Cr(III)のフミン物質による錯体化反応のモデル実験では,pH5で最大となり,続いてpH4,以下pH6以上ではpHの上昇に伴い順次低下した。(6)Cr(VI)-ベントナイトにフミン物質も含めた三相系におけるCr(VI)除去の基礎実験の結果,ベントナイトのみでは除去されないCr(VI)がフミン物質の添加によって除去されうる形態に変化したことが示唆された。(7)トリチウム標識した物質と生態系に関連した官能基との同位体交換による基礎実験の結果、物質へのT取込みの程度を非破壊的・定量的に明らかにできることが示唆された。
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