Research Abstract |
本研究は昨年度からの継続であるが,湿地とは,「川の始まりから海の浅いところまで,山地水域から湿原,湖沼,河川,人工水系を含み,干潟,藻場などの沿岸域まで,水のあるところ,水と命の出会うところの総称」という定義に基づき,測定対象を新潟県内の湖沼・河川,降水,土壌,海洋と幅広く設定して化学分析を行った。湿地における環境汚染物質の動態把握ならびに汚染物質の低減化や回収除去法の探索の目的で,1.環境試料中の酸素安定同位体比(δ^<18>O),窒素・リンの栄養塩項目(T-N,NH_4^+-N,NO_2^-N,NO_3^-N,T-P,PO_4^<3->-P),多環芳香族炭化水素類(PAHs),溶存有機炭素(DOC),クロロフィルa等の定期的測定,および2.各種汚染物質の取り込みや吸着に関するモデル実験を行った。その結果,主として以下のような知見を得た。(1)近年の大気及び降水におけるPAHs(19物質)の濃度実態を調べたところ,大気中のPAHs年平均濃度は都市部("新潟")で21ng/m^3,山間部("笠堀")で9.9ng/m^3である。特に夏季と秋季においては都市部が山間部より4〜6倍大きい濃度を示す。また降水中のPAHs量は山間部において冬季に増加する傾向が見られた。(2)佐潟では,地点間の濃度差が顕著に見られたが,下潟から水が流出する地点でδ^<18>OをはじめpH,DOC,クロロフィルaの値が高い,下潟南側岸辺の湧き水においてT-Nが高い点が特徴的である。(3)ホテイアオイによるCr(VI)吸着除去効果は,pH4-8において見られるが,pH5で最大となりpHの増加に伴いその効果は低下する。(4)海藻に対する吸着挙動はREEs,ThおよびUでそれぞれ異なる。特にイソモクのU取り込みは,成分のアルギン酸に大きく起因する。(5)トリチウム(T)が種々の物質に与える影響の把握のため,同位体交換における各物質の反応性を解析したところ,脂環式カルボン酸の反応性は脂環式アルコールの反応性よりも高いことがわかった。
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