Research Abstract |
PCBの甲状腺ホルモン撹乱作用(特に血中甲状腺ホルモン濃度低下作用)の作用発現メカニズムを動物種差と考え合わせて解明し,ヒトへの外挿を進める上で,ヒトにおけるサイロキシン(T_4)のグルクロン酸抱合に関与するUGT分子種を解明する必要がある。そこで,ヒト肝臓におけるT_4のグルクロン酸抱合に関わるUGT分子種を明らかにするために,昆虫細胞発現系UGT分子種とヒト肝ミクロソームを用いて,T_4のグルクロン酸抱合反応を解析した。検討した昆虫細胞発現系ヒトUGT分子種の中で,UGT1A1,UGT1A3,UGT1A9及びUGT1A10は,明確なT_4-UDP-GT活性を示した。ヒト肝ミクロソームにおけるT_4-UDP-GT活性の個人間変動は,β-estradiolの3位のグルクロン酸抱合酵素活性と有意な相関関係が認められた。さらに,ヒト肝ミクロソームのT_4-UDP-GT活性とUGT1A1及びUGT1A3の発現量との間に有意な相関関係が認められた。しかし,UGT1A9の発現量とは相関関係は認められなかった。また,ヒト肝ミクロソームのT_4-UDP-GT活性は,26,26,26,27,27,27-hexafluoro-1α,23(S),25-trihydroxyvitamin D_3(UGT1A3の特異的阻害剤)により強く阻害され,bilirubin(UGT1A1の特異的阻害剤)及びβ-estradiol(UGT1A1及びUGT1A9の特異的阻害剤)ではわずかに阻害されるのみであった。これらの結果から,ヒト肝臓におけるT_4のグルクロン酸抱合は,主にUGT1A1及びUGT1A3により触媒されることが強く示された。また,ヒトのT_4-グルクロン酸抱合には,肝臓に加え小腸のUGP-GTも関与していることが示唆された。今後,さらなる追究が必要である。
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