2007 Fiscal Year Annual Research Report
次世代にわたるガス状化学物質による脳への毒性影響の評価-リスク評価をめざして
Project/Area Number |
18510064
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
笛田 由紀子 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 産業保健学部, 助教 (10132482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保利 一 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (70140902)
上野 晋 産業医科大学, 医学部, 講師 (00279324)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 講師 (10309958)
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Keywords | 次世代影響 / 神経発達毒性 / 海馬スライス / 1-プロモプロパン / エチルベンゼン |
Research Abstract |
次世代脳への影響評価を確立する目的で,昨年度は,1-プロモプロパン(1-BP)を胎児曝露された仔ラット幼若脳を電気生理学的に調べた結果,海馬興奮性発達時期に影響があることがわかった。その影響は700ppmで明らかであったが400ppmでは傾向を示すにとどまった。今年度は,その興奮性の変化に授乳の影響がどのくらいあるのか調べる目的で,cross-fosteringを行い,従来の曝露群と対照群に加えて,胎児期のみ曝露された『胎児期曝露群』と曝露された母ラットから授乳された『授乳曝露群』を作成した。胎児期曝露群と授曝露群は,いずれもPDN14で興奮性発達が冗進する傾向を示しつつも対照群との有意な差には至らなかった。つまり,胎児期と授乳期連続して代謝産物等などに曝露されるということが,海馬における興奮性発達時期をずらしたものと考えられる。脳の神経発達の重要な時期は出生前後1週間くらいと考えられており,本結果はこの仮説に矛盾しないと考えられた。来年度は,この興奮性発達時期の変化の毒性学的意義を検討し,関与する脳内分子の検索するとともに幼若期の行動変化を解析する。 中枢神経への影響が懸念されつつも神経毒性情報がほとんどないエチルベンゼン(EB)について,ACGIHの定める100ppmの10倍濃度である1000ppmと500,250ppmで亜慢性曝露をマウスに実施した。昨年度報告したように,濃度1000ppmでは曝露初日にBALB/Cマウス64匹中5匹に失調性歩行が観察されたが,C57BL/Cマウスには見られなかったことから影響には系統差があることが判明した。白血球数の低下が両系統に見られたが,500ppmでは失調性歩行や白血球数の変化などの影響は見られな一かった。EBはNMDA受容体機能を抑制することが報告されているが,1000ppmでの亜慢性曝露において,刺激応答性、フィードバック抑制、LTP増強度は変化しなかった。血中EBの半減期は約30分だったことから,誘導酵素による代謝が速いことが予想さ一れた。NOAELは500ppmであった。
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