2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18510092
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Research Institution | Toyota Physical & Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
張 紀久夫 Toyota Physical & Chemical Research Institute, フェロー (60013489)
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Keywords | 巨視的マクスウェル方程式 / 微視的非局所応答 / 長波長近似 / 旋光性 / 非共鳴分極 / 電磁場グリーン関数 |
Research Abstract |
1.昨年度から行っている「巨視的マクスウェル方程式の再構築」の研究が一般論として一段落という段階に到達した.議論の出発点としては信頼性の高い「微視的非局所応答理論」の基礎方程式を用いて,それに巨視化=長波長近似という観点から物理変数と感受率に対するTaylor展開を行うという論理的に明確な手法で,巨視的な変数の間に成立する関係式を導いた.この関係式は通常の巨視的マクスウェル方程式より一般性があり,一つの感受率テンソルだけで書かれている.従来の導出方法に欠けていた点は巨視化とは独立な「対称性(旋光性の有無)の考察」で,この研究結果から,独立な誘電率と透磁率で記述できるのは旋光性の無い場合に限られること,またその際,磁気感受率として磁場HではなくBに対して定義されたものを用いることが本質的に重要であることもわかった。旋光性があるときに従来用いられてきたDrude-Born-Fedorov方程式による現象論は共鳴領域で正しい振る舞いを与えないこともわかった.この研究の詳細な結果はJ.Phys.;Condens.Matter(2008年4月号)に掲載された. 2.以前の科研費(基盤研究(C))で開発した一般論「非共鳴感受率を繰り込んだグリーン関数の方法」を多層膜キャビティ中の半導体量子井戸に適用し,面内周期構造(LPS)を加えたときの多分枝キャビティポラリトンの分散曲線を効率よく計算する方法を定式化した.これを用いて数値計算した結果から,LPSが無いときのキャビティポラリトンがcavity leaky modesの折り返された分枝と混ざり合うことにより,見かけ上ラビ分裂の巨大化が起こるという仕組みを明らかにした.これは量子井戸領域の電磁場が大きく増強されることを意味しており,その増強電磁場を利用する非線形効果の研究へと発展が期待される.この結果は共同研究したローマのグループとの共著論文としてPhys.Rev.Bに掲載された.
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